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千葉マリーンズバトルロワイアル第6章

1 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 19:59:18 ID:k5A/+k3v0
前スレ 
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1110788201/

第4章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1105085112/
第3章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1105003484/
第2章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1099564992/
千葉マリーンズ・バトルロワイアル
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1097081116/

<注意事項>
職人さんはトリップ推奨
トリップのつけ方:名前欄に #好きな半角英数文字(8文字)
例: #password → ◆ozOtJW9BFA

保管庫  
http://www.age.cx/~marines/cmbr/


2 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:00:08 ID:k5A/+k3v0
現行スレ

中日ドラゴンズバトルロワイアル第十章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1106125029/l50
アテネ五輪日本代表バトルロワイアル
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1106146546/l50
ソフトバンクホークスバトルロワイアル第二章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1108894499/l50
阪神タイガースバトルロワイアル第4章
http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1108902838/l50



3 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:01:46 ID:k5A/+k3v0
他球団の保管庫

読売巨人軍バトルロワイヤル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/      (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/   (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/   (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://cdbr2004.hp.infoseek.co.jp/ (2004年版)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://www3.to/fdh-br/
阪神タイガースバトルロワイアル
ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/ 
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/


4 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:04:32 ID:k5A/+k3v0
関連スレ

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ3 
http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1105704084/l50

5 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:08:37 ID:k5A/+k3v0
第5章が即死でしたが、6章として立てました。
空気が読めてなかったら申し訳ない・・・_| ̄|○

6 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:16:41 ID:NMflOizo0
乙なんですが前スレに貼られてた作品は誰か保存してんすかね

7 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:30:09 ID:sEsqB15p0
保守

8 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:48:37 ID:5xY0+xUo0
ほしゅ。
レス44まで持ってますけど、コピペしましょか?

9 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:53:16 ID:sEsqB15p0
もし良かったらお願いしたいです・・・

10 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 20:55:49 ID:5xY0+xUo0
ではやってみます。
といっても薮田の話だけですが。

11 :第5章よりコピペ:逆襲の薮田4〜3つの笑顔〜(1/3) ◇QkRJTXcpFI:05/03/16 20:57:53 ID:5xY0+xUo0
 山下徳人は思案に暮れながら、重たい足取りで歩く。
薮田安彦と愛甲猛に指示されるまま、海岸からスタジアムの方向へと歩かされている。
歩く道は舗装されているが、周りは林に囲まれていて建物はない。
山下は今の状況をゆっくり確認した。
一つ、彼の背中には愛甲によって銃が突きつけられていること。
二つ、その後ろを歩く薮田も銃を構えていること。
三つ、この2人を他の選手に会わせた時、船があれば逃げられることが知らされてしまうこと。
四つ、そうなったときの責任は自分が取らされるだろうと言うこと。
五つ、スタジアムに着いた時、自分はどうなるのか…

「…はぁ」
 山下はため息をついた。
「なんだよ山下、早く歩け」
後ろの愛甲が銃口で背中をつつく。
「愛甲さん。…もし、スタジアムに着いたら俺はどうなるんです?」
「それは言えんな」
「人質にするなら無駄ですよ。ははっ…」
「何ぃ!?」
山下のかすれた笑い声を聞いて、愛甲の声の調子が思わず高くなった。
少し目が泳いで、一瞬薮田のほうを振り向く。目が合ったが、彼は何も言わなかった。
「このゲーム、俺たち運営側の人間すら虫けら同様に扱われているんですよ。
 連れて来られている人間は全員、残してきた家族を人質にとられてるんだから」
「なんと…!?」
「一週間前だ。球団に呼び出され、気づいた時にはこの島。拒否したら制裁として家族を殺すと。
 冗談かと思えば、目の前には本物の銃に弾薬。そのまま武器を使って軍事教練。
 反抗どころか、大きな失敗をしても制裁はあると言う。生きる希望を失うような、ね」
口の端を少し上げながら話す山下だったが、目じりは少しも緩んでいない。遠くを見ている。
愛甲たちにはそれは見えなかった。
「そんな戯れ言を信じろって言うのか?」
愛甲が声を荒げて言い捨てる。
「別に信じなくていいですよ、今の俺には抵抗のしようがない。
 このまま案内して、言われるままにするしかないんでしょう?」

12 :第5章よりコピペ:逆襲の薮田4〜3つの笑顔〜(2/3) ◇QkRJTXcpFI:05/03/16 20:58:48 ID:5xY0+xUo0
チッ。愛甲が舌打ちをした。
薮田はまだ黙っていた。周りを伺いながら、しかし二人のやり取りをじっと聞いていた。
「さてさて、愛甲さんたちは禁止エリアが分からない。知っている俺に道案内させるしかない。
 薮田がボカンと爆死したら、俺もすぐさま愛甲さんの手でズドンでしょうね。
 しかし、おめおめと反乱者たちをスタジアムに案内したら、今度は制裁が待っているでしょう」
(その上、船で逃げられる事が他の選手に知られたら確実に制裁かな…)
「どうすればいいんですか?俺は」
「えっ」
山下の声の調子がいきなり低くなったのに驚いて、愛甲は反射的に声を出した。
見ると、その背中はわなわなと震え、むせび泣くような小さな嗚咽が聞こえてきた。
「どうすれば、いいんですか? 死にたくないんですよ、俺は…。
 分かってるんです。俺の家族が死ぬぐらいなら、今ここで俺が抵抗して死ねば、それで済む…。
 でも、俺は死にたくないんです…くっ…」
「山下…」
愛甲は知っていた。かつて、真正直に自分とポジション争いをしてきた山下を。
足を引っ張るでなく、真っすぐに挑んで、そしてレギュラーを獲った山下を。

 いつの間にか、三人の足取りは止まっていた。
誰からともなく、足を止めた。わずかな衣擦れの音は周りに茂る林の中へ吸い込まれる。
長い長い間、何時間にも感じられた沈黙の後、薮田が口を開いた。
「山下さん、海岸まで戻ってください」
「何?」
愛甲が山下への警戒も忘れて振り向いた。
しかし、山下もまた予想外の言葉に、細い目を少し大きめに開いて薮田を向いているだけだった。
「わいらとは何の接触もなかったってことで、いいでしょ?
 禁止エリアだけ、教えてください」
「薮田、しかしだな!」
愛甲が山下の様子を伺いながら、薮田に向かって叫ぶ。
「みんな、死にたくないですわ。まして、家族は大事や。ほんまに、大事や。
 うち帰ったら笑顔で迎えてくれる、こんな大事なもんありません。
 だから、そんな大事なことで嘘はつかんと思うわけですよ」
ニコリと笑う薮田が立っていた。その眼に懐疑や臆病を示す一点の光も宿すことなく、悠然と。

13 :第5章よりコピペ:逆襲の薮田4〜3つの笑顔〜(3/3) ◇QkRJTXcpFI:05/03/16 21:00:48 ID:5xY0+xUo0
「愛甲さん、そう思いませんか?」
愛甲は山下に向けていた銃口を下げた。
「ふん、己から進んで殺しの片棒担ぐ度胸なんてこいつにゃ無いよ、分かってたさ」 
堰を切ったように山下は涙をポロポロとこぼす。そして二人に深々と頭を下げた。

 禁止エリアや道筋などを告げた後、山下は言った。
「薮田、スタジアムに行って、どうするつもりなんだ? 俺もできることがあれば…」
薮田が首を振る。
「山下さん、俺ら選手と違って、運営側の人は普通にしてれば生き残れるんでしょ?
 だったら何もせんほうがいいですよ。何も知らんほうがええ。
 うち、帰りたいでしょ?笑顔、見たいでしょ?」
山下が唇を噛んだ。この男の逞しい意志の前には、何を言っても無駄なのだと思った。
「すまん…薮田。 強くなったな、お前」
「何ですか。こそばゆいわ、やめてください」
薮田は笑って山下の肩を掴むと、クルッと体を回して背中をポンと突いた。
「ご無事で、山下さん」
背中を押された勢いのまま歩き出した山下は、愛甲と薮田に手を振った。小さくつぶやく。
「二人こそ…無事で」

 海岸の方へ戻る山下の背中を見送りながら、薮田はスタジアムの方向へと振り返った。
「あたた…、左肩はやっぱり痛いわ。行く途中に家かなんかあるかな。
 ま、血は止まってるし、動くことは動くから大丈夫かな」
と、薮田はさっきから無言の愛甲に気づく。
「どうしたんですか?愛甲さん?」
「あ、いや……ささ、急いでスタジアムに向かわないと」
(帰ったら笑顔で迎えてくれる家族……、俺はみんな捨てちまったなぁ。
 ま、自分の好き勝手に生きててそうなったんだけどよ。
 どこへ帰ろか世捨て人、帰るヤサより死に場所探して、ぶ〜らぶらりってか?)
周りには誰もいない。道路の真ん中を二人の男が歩いていく。
「なぁ、薮田。もし俺が死ぬ時は、笑顔で送ってくれよ。せめて、な」
「何を言うてるんですか、縁起でもない!」
真面目に怒る薮田に対して片手を上げて謝ると、愛甲は静かに笑った。

14 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 21:04:33 ID:5xY0+xUo0
自分が持ってるとこでは以上です。
職人さんのトリップ思いっきり反転してますけど、
本文が行数いっぱいだったので名前欄に入れました。
あとは◆CLM31pWOr6さんによる死に様のまとめ。

このあとでスレ死亡までに投下された作品があったら、私も読みたいんですが…

15 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 21:09:15 ID:EiKpH+5K0



16 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 21:15:51 ID:jIqqCajp0
乙です
見たのが職場からだったので保存できていませんが
この後、ユウゴーと平下の続きがありました

17 :第5章よりコピペ:同じ顔(1/5)  ◇Ph8X9eiRUw:05/03/16 21:16:52 ID:S2WCfzNy0
「とりあえず、隠れているなら出てきてもらえますかね」
ぐっと平下の右手に力がこめられたような気がした。
覚悟を決めてユウゴーは隠れていた門から姿を現し、その動きに連動するように平下が振り返る。
その瞳はしっかりと、ユウゴーだけを見据えていた。
もっと、その目には狂気とか冷淡さとかそういった感情が浮かんでいるかと思ったのに
平下の表情はいつもとなんら変わらないものだった。
いつもと、こんなところにつれてこられる前と一切変わらないその表情。
状況だけはおかしいくらいに変化し、人を一人殺しているというのに
まるでそんなことがなにもなかったかと誤解させられそうなほど同じだった。
逆に、それがユウゴーの奥におしこめようとしている恐怖を大きくさせる。

とりあえず、いつ行動を起こされてもせめて身を隠せるように
家の塀のそばぎりぎりに立ち、相手との距離は大きく保ったままにする。
自分の視線はただ一点、平下の右手、銃の握られたその手だけに集中し
それが動こうものならもうなにも考えずに逃げるつもりでいた。
殺されるために姿を現したわけではない。こんなところで今死ぬわけにはいかない。
だったらこうやって出てこなくてもとっさに逃げればよかったのにな。
今更自分の行動を後悔してももう遅い。
確認をしておきたかったのだ。本当にこいつは外野手以外を殺さないのか。
それ以外の人を殺す気は無いのか。そこまでしてポジションが欲しいのか。
そして、今からでもそんな考えを捨てる気は無いのか。

18 :第5章よりコピペ:同じ顔(2/5)  ◇Ph8X9eiRUw:05/03/16 21:17:36 ID:S2WCfzNy0
自分の姿を確認しても、その右手の銃が構えられる気配はない。
「まさか本当に出てきてくてくれるとは思いませんでしたよ」
厳しい表情のユウゴーとは裏腹に、平下は少し余裕の表情、軽く笑みを浮かべたようにも見える。
「適当に言ってみただけなんですよね。物音も気のせいかと思ってたくらいなんですけど」
そういって平下は自分の足元、先程まで見つめていた血溜りを指差した。
「これ、移動させたのはユウゴーさんですか」
これ?まるで物のように。まるでどうでもいいようなもののように。そんないいかた。
ユウゴーのなかに怒りがこみ上げたが、あわててぐっと押さえ込んだ。
いま冷静さを失えば確実に逃げるチャンスなどなくなってしまう。
ユウゴーは気を落ち着かせるために、そっと平下に見えないようにポケットに手を差し込んだ。
指先に冷たいものが触れて、それが少しだけ頭を晴らしてくれる。
先程隠れていた民家でなにか武器になりそうなものを探していた際に戸部に渡されたもの。
包丁かなにか、多少威嚇できるようなものはないかと二人で物色を続けたが
台所を探してもそんなようなものは一切見つからなかった。
しょうがないのでなにも持たずに行こうとした自分に、戸部は
「これならきっと役に立つはずだ!」と見つけた小瓶をくれたのだ。
ラベルには「お徳用 ラーメン胡椒」の文字。
これのどこが役に立つんですか戸部さん。そういってやりたかったのだが
戸部の目が真剣そのもので、断るに断りきれず無理矢理持たされてしまったのだ。
どこかで捨てようかとも考えたが、さすがに戸部の押し付け気味な優しさを
無駄にするわけにもいかず、結局ずっとポケットに押し込んだままだった。
でも、今はなにもないよりマシかもしれない。上手く使えば相手の隙を生み出し
逃げるチャンスを作り出せるかもしれない。

19 :第5章よりコピペ:同じ顔(3/5)  ◇Ph8X9eiRUw:05/03/16 21:21:11 ID:S2WCfzNy0
「わざわざこれを動かすためだけにここにもどってきたんですか?それともなにか別の考えでも?」
「そういうおまえは、なにをしてるんだよ」
「いや、俺は別にたいした用はなかったんですけどね」
気のない返事がかえってくる。ただし、瞳だけは確実にユウゴーを捕らえ
決して逃げられないように監視されているかのようだ。
その瞳は自分の奥にある畏怖を感じ取ったのか、平下は少しほほを緩めた。
笑顔を、敬語を恐ろしいと感じたのは初めてだった。
「あの、ユウゴーさん、とりあえず俺だって無駄に殺しがしたいわけじゃない。
少し聞きたいことがあるんですよ。返事によっては、殺しませんから」
この言い方、まるでもう自分の命がこいつに握られてしまっているみたいじゃないか。
実際、それに近いものはあるんだけどな、とユウゴーは思う。
「とりあえずもう一度聞きますけど、これ移動させたのはあなたなんですよね?」
「そんなこと聞いてどうするんだよ」
「いや、また死んでなくて逃げられたのかと思ったんですが
さすがにそんなことはもうないとは思うんですけど。今度は確実にやりましたから」
こいつは、曽我部さんのことをなんだと思っているんだろう。
押さえつけなければいけないはずの怒りが思わず自分の顔に出る。
「お前が、殺したんだろ。そんなことあるはずないってことは、お前が一番わかってるだろ」
平下の表情は変わらない。お前が殺した、と正面切っていってやれば
多少なりの苦悩だとかそんなものが浮かぶかと思ったけれどなにも浮かばない。
その瞳にも狂気や冷酷さとかそんなものは一切現れていない。
いつもと同じ、こんなところにつれてこられる前と、同じ顔。
「人を殺した」というどうしようもない事実があるはずなのに
そんなことを忘れてしまいそうになるくらい、変化のない平下。
まだその顔に狂気のかけらでも浮かんでいれば、まだこいつの行動を納得できたかもしれないのに。
人は、こうもあっさりと人を殺めることが出来るのか?


20 :第5章よりコピペ:同じ顔(4/5)  ◇Ph8X9eiRUw:05/03/16 21:23:09 ID:S2WCfzNy0
「おまえは、なにも感じないのか?」
「なにもって、なにがですか」
「ただポジションのために、それだけのために、殺すなんて」
平下の視線が一瞬だけ自分から逸れ、答えを探すように放浪する。
しかしまたしっかりとその目はユウゴーを捉え、そしていった。
「俺は、自分の居場所を護るためなら、なんだってやりますよ。
ずっと欲しくてたまらなかった、自分が必要とされている場所。
それをようやく見つけたから、もう絶対に失うわけにはいかないんです。
俺はここで野球がやりたい。ここにいたい。
だから球団が殺し合いをしろっていえば素直に従うしかないでしょう。
そうするしかここで野球を続ける方法はないんですから」
平下の目はあまりにも真っ直ぐすぎて、ユウゴーは一瞬
どちらが正しいのかわからなくなりそうだった。
思いは同じ。自分だって野球をしたい。ここにいたい。
それを続けるためにとった行動が違うかだけの問題。
「それに、実力だけじゃレギュラーは取れないんですよ。
記録がかかっているから、生え抜きのベテランだから。そんな理由で試合に出続けている者もいる。
それなら・・・いなくなってもらうしかしょうがないじゃないですか」
誰か否定してくれ。こいつのいっていることは間違いだって否定してくれ。
否定したい。否定しなければいけない。それなのに、
どこかで、それを納得できそうな自分がいる。
いつもと同じ顔の平下。この表情を知っている。
打席に立ったときのような、自分のやるべき仕事を知っているそのときの顔。
野球選手なら、誰でも持っているその表情。
その顔のまま、人は誰かを殺せるのか。それなら、もしかしたらいつか俺も。
いや、そんなはずはない、断じてない。無理矢理にでもそう強く思う。

21 :第5章よりコピペ:同じ顔(5/5)  ◇Ph8X9eiRUw:05/03/16 21:24:33 ID:S2WCfzNy0
「ところで、確認のために聞きますけど、ユウゴーさんは内野手ですよね?」
急な質問に何故かユウゴーは答えに戸惑ってしまう。
ぐっと平下の右手のグリップに力がこめられたような気がした。
そうだ、といえばいい。内野手だといえばいい。それだけでいい。
それなのに、たった一言の肯定の言葉が上手く喉から出てこない。
自分の居場所は、内野で正しいんだろうか。
登録は内野手。でも使ってもらえるなら外野だろうがなんでもよかったのも事実。
ユーティリティプレイヤーなどと格好いい言葉でいわれることがあるけれど
それは裏を返せば単に自分には、ちゃんとした定位置がないってことになるんじゃないのか。
今まで抱いたこともなかった不安が急激にあふれだす。
「とりあえず、絶対外野は守らないって約束してもらえるなら、俺は殺しませんよ」
構えはしない。指だけがトリガーにかけられる。
「俺は・・・」
そこまでしか声にならない。そんな自分を見て平下は少し笑ったように見えた。
「自分の居場所が、わかりませんか」
考えがすべて読まれているかのように、自分の中で否定しておきたかった事実を
いとも簡単に向こうに言葉としていいはなたれる。
「あんただって居場所が欲しくてたまらないんじゃないんですか」
言葉を。すべてを撥ね退けられるだけの言葉を。
こいつにのまれないようにする言葉をなにか。
しかし喉の神経すべてがが凍りついたように全く反応してくれない。
同じ顔。その平下と目が合った。今度は気のせいではなく笑っていた。
「俺たち、同じなんですよ」

22 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 21:27:40 ID:S2WCfzNy0
>17-21
ユウゴー&平下の続きをサルベージしました。
気のせいかex10鯖は連投規制が前よりきつめですか?
即死の基準がわからないのでとりあえずいろいろ貼って回避するしかないですね。

撤退した人間が言うのもなんですが、書き手さんdat落ちにめげず頑張ってください。

23 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 21:29:39 ID:jIqqCajp0
>17-22
そうそう、これです!乙です

24 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 21:43:24 ID:iBPfLiqU0
支援保守

25 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 22:31:15 ID:11Bw0w8O0
保守

26 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 22:38:05 ID:AI+VWhQB0
他ファンだけどマリバト楽しみにしています
主力以外の選手はほとんどここで覚えました

27 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:12:49 ID:dB9Df2k9O
保守保守

28 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:27:29 ID:5kVDL7G/0
保守

29 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:31:11 ID:tHDKyNbr0
>>11-13,>>17-22
乙です!

30 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:32:53 ID:tHDKyNbr0
保守

31 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:34:05 ID:tHDKyNbr0
レスがいくつまでつけば即死回避になるんでしょうか?
やっぱ40かな?

32 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:36:35 ID:oTqn+crU0
>>31
即死判定は60になったらしいよ。
というわけで前スレから◆CLM31pWOr6さんのまとめ拾ってくる
ネタバレ風味らしいけど、まあいいや。



33 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:37:26 ID:oTqn+crU0
【現在の状況】
  参加者:55人
  死亡者:30人
  生存者:25人

【投手】

  11 神田義英
     サブローに鉄パイプで殴られて死亡

  12 藤田宗一
     成瀬に首を締められて死亡

  13 浅間敬太
     ゲーム阻止の決意はしているが、どうしていいか分からずに彷徨っている。
     所持武器:ナイフ6本

  14 小宮山悟
     宏之らしき人物を杉山と共に目撃、発狂寸前の杉山の後を追っている。
     所持武器:コルトガバメント(弾なし)

  17 長崎伸一
     小林雅に撃たれて死亡

  18 清水直行
     川井が仕込んだ毒薬で死亡

  19 田中良平
     青野を銃殺した後、自殺


34 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:37:29 ID:NMflOizo0
ネタバレ風味っていうか、所持武器とかが少し前の情報だった覚えがある

35 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:38:28 ID:oTqn+crU0
【投手2】

  20 薮田安彦
     愛甲と共に山下コーチを脅してスタジアムまで向かうつもりだったが、
     人質をとられていると聞いて山下コーチを解放。自力でスタジアムまで向かっている。
     所持武器:ノコギリ

  21 内竜也
     於保と共に行動中。於保の頭上に諸積の言う黒い靄を見る。
     所持武器:短銃

  28 加藤康介
     サブローに首を切られて死亡

  29 小野晋吾
     発熱して衰弱した将を発見、共に行動中。薬を探している。
     所持武器:スパナセット

  30 小林雅英
     市街地に向かっている大塚・福浦を待ち伏せ中。新しく2名が追加されたリストは持っていない。
     所持武器:ピストル、ライフル他

  31 渡辺俊介
     大塚に刺されて死亡

  34 川井貴志
     青野に刺されて死亡

  35 三島輝史
     藤井に刺されて死亡


36 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:39:12 ID:oTqn+crU0
【投手3】

  37 前田浩継
     清水将に刺されて死亡

  41 小林宏之
     禁止エリアの中をスタジアムに向かっている。62と言う数字に異常な反応を示す。
     濃い紺色のウィンドブレイカー着用。
     所持武器:マシンガン

  46 山崎健
     金澤に撃たれて死亡

  48 高木晃次
     清水将に首を切られて死亡

  54 黒木知宏
     大塚・福浦・垣内と別れ、単独行動中。何か考えているらしいが、詳細不明。
     所持武器:モデルガン

  55 杉原洋
     金澤にチェーンソーで襲われて死亡

  60 成瀬善久
     初芝と共に行動中。"子供返り"している。
     所持武器:デザートイーグル(崩れた岩の下敷きになる)<br>拳銃(寺本から奪う)

  67 戸部浩
     ユウゴーと別れ、単独行動中?行く先々で場を和ませる貴重な存在。
     所持武器:不明。何か使いにくいもの。


37 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:40:39 ID:oTqn+crU0
【捕手】

  22 里崎智也
     堀と共に行動中。ゲームを阻止するという固い決意を清水将の遺体に誓う(?)。
     所持武器:痺れ薬のついた矢、リンゴ1個

  27 清水将海
     小林雅に撃たれて死亡

  33 橋本将
     金澤との2回目の対戦の後、発熱。朦朧としている所を晋吾に発見され、共に行動中。
     所持武器:チェーンソー(今は晋吾が持っている)

  39 田中雅彦
     金澤に撃たれて死亡

  45 辻俊哉
     川井に頚動脈を切られて死亡

  62 金澤岳
     CMBR唯一(多分)の無差別マーダー。殺しまくり中。最大の標的は相変わらず将。
     所持武器:スタン・ロッド、ワルサーPPK

  93 杉山俊介
     小宮山と共に行動していたが、宏之らしき人物を発見し、精神に破綻をきたす。
     所持武器:ハンマー


38 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:41:31 ID:oTqn+crU0
【内野手1】

  1 小坂誠
     青野に首を刺されて死亡

  5 堀幸一
     里崎と共に行動中。この人は正統派の癒し系。
     所持武器:マシンガン

  6 初芝清
     成瀬と共に行動中。こんな状況にあっても初様は初様。船があれば逃げられると考えている。
     所持武器:不明

  7 西岡剛
     今江と行動していたが、今江がG-5に向かい、一人に。川井から奪った探知機で、
     動かないコバマサを不審に思い、そちらに向かっている。
     民家で見つけたシャツを着用(?)。
     所持武器:ポケットピストル、探知機、リスト。

  9 福浦和也
     大塚と共に行動。市街地に向かっている。
     所持武器:ボウガン、料理用のナイフ

  10 澤井良輔
     運営スタッフに撃たれて死亡

  25 今江敏晃
     西岡と共に行動していたが、12時の放送を聞いて、西岡の制止も振り切ってG-5に向かう。
     民家で見つけたシャツを着用(?)。
     所持武器:リボルバー式の銃


39 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:42:43 ID:oTqn+crU0
【内野手2】

  40 渡辺正人
     川井に撃たれた後今江に首を切られて死亡

  52 塀内久雄
     加藤に鉄パイプで殴られた後、サブローに首を切られて死亡

  53 原井和也
     小林雅に撃たれて死亡

  58 青野毅
     田中良に撃たれて死亡

  59 富永旭
     体内の爆弾が爆発して死亡

  64 藤井宏海
     三島の拳銃で自殺

  66 ユウゴー
     戸部と別れた後、曽我部の遺体を弔った時、再び平下に遭遇。
     所持武器:防弾チョッキ

  68 早坂圭介
     金澤に火をつけられて死亡


40 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:44:23 ID:oTqn+crU0
【外野手1】

  0 諸積兼司
     於保に撃たれて死亡

  3 サブロー
     宏之に撃たれた傷口が再び開きかけている。埋め込まれたチップからの精神的なダメージも相当ある模様。
     現在どこで何をしているかも不明。
     所持武器:剃刀の刃、鉄パイプ、ボウガン

  23 大塚明
     福浦と共に市街地に向かっている。俊介に打たれた脇腹を庇いながら"遺品"のマシンガンは離さずにいる。
     所持武器:火炎放射機、マシンガン

  24 平下晃司
     曽我部を殺した後、再びその場所に戻る。ユウゴーがそばにいるが、誰かはわかっていない模様。
     所持武器:拳銃

  38 垣内哲也
     大塚・福浦・ジョニーと別れた後、喜多を突き放した後、喜多が死んだ事に苛まれている。
     所持武器:サブマシンガン、鎖鎌

  44 喜多隆志
     西岡に撃たれて死亡

  47 井上純
     喜多に鎖鎌で襲われて死亡


41 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:45:20 ID:oTqn+crU0
【外野手2】

  51 於保浩巳
     内と共に行動中。何を考えているのかわからない。怖い。
     所持武器:不明

  61 寺本四郎
     成瀬に撃たれて死亡

  65 曽我部直樹
     平下に撃たれて死亡


-------------------------------------


42 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/16 23:46:55 ID:oTqn+crU0
>>34
そうだね。でもまあレス数かせぎってことで。

43 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:02:00 ID:PeGO+6tk0
>>33-41
乙です。

44 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:03:35 ID:PeGO+6tk0
こっからガンガン行けるとこまで保守してみます。

45 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:04:57 ID:PeGO+6tk0
hosyu

46 :名無しさん@Linuxザウルス:05/03/17 00:05:06 ID:VF0qu49S0
保守

47 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:06:20 ID:PeGO+6tk0
保守

48 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:06:58 ID:PeGO+6tk0
さらに保守。

49 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:10:09 ID:PeGO+6tk0
保守。

50 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:11:16 ID:PeGO+6tk0
ほんまに保守

51 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:16:17 ID:PeGO+6tk0
保守保守保守

52 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:18:03 ID:Kv7BpSPD0
即死判定ってレス数だっけ?どっかでサイズ(KB)だと聞いた覚えが。
なんにしろ捕手。

53 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:18:06 ID:PeGO+6tk0
「保守」

54 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:20:04 ID:PeGO+6tk0
>>52
自分にもよく分からない・・・でも保守。

55 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:25:23 ID:1A4/XXL60
おやすみ薮田様保守

56 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:25:35 ID:PeGO+6tk0
保守

57 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:26:09 ID:PeGO+6tk0
保守

58 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:29:08 ID:PeGO+6tk0
hosyu


59 :名無しさん@Linuxザウルス:05/03/17 00:30:12 ID:VF0qu49S0
>>55 昨年の年末が懐かしい…

開幕が待ち遠しいのは薮田様のおかげ 保守

60 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:31:45 ID:PeGO+6tk0
とりあえず60っと。
お休みなさい保守。

61 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 00:45:59 ID:IajR2nEr0
保守

62 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 01:21:44 ID:6bU1g05d0
見守るスレ落ちたね

63 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 03:17:14 ID:fgD4j63Z0
即死回避の基準がよくわからないのでとりあえず保守。

64 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 10:27:22 ID:jTWtAY1B0
自分も一応保守

65 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 16:32:50 ID:JBpv2XtV0
                     P
           P    .P     l     P   .P      \                      /
           l     l     l     l     l       \   We Love Marines!   /
   ____|____|____|____|____|__i___   \                 /
  / ○ ○ iニi iニi [PEPSI][[ロッテリア] ._ _ _ _ _ _ _ _.\
/.  …=.|三| |三| .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .曰田田田田田  \ 廾廾廾廾廾廾888888888888888888
  ..... ..... ..... |三| |三| .| うえるかむ!!! .|  ヨ|三‐ 〒. ▽。。  |二二二二二二二二二二二二二二
\::::: ::::: ::::: |三| |三| .|   (~゚∀゚~)   |  r.r.r.r、 ::::: ::::: :::::/  ヽヽ  圓] ヽヽ     ヽヽ 圓]
  \ ::::: ::::: l三| |三| .|______|  LLLLl ::::: ::::: /     l l二二二二l l::::::::::::::::區l l區:::::
    ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄     l l ̄ ̄ ̄ ̄l l ̄ ̄ ̄ ̄l l ̄ ̄
     |                         .|       l l────l l────l l──
     |                         .|. _______l l____l l____l l__
     |                         .| / (Θ щ Θ)[≧Д≦][´・Θ・`](ёдё)
     | 只                         | /( ・ヘ・)|ヽ`∀´|《 ´ホ`リ(○ε○)(-Θ- )
 ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄レ ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄l ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
──────────────────────────────────────


66 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 20:11:34 ID:U5v60qxM0
見守るスレ立てました
http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1111057303/l50

67 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/17 23:05:28 ID:eTs2X9O+O
乙です保守。

68 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/18 08:16:31 ID:LLLxMAkt0
保守

69 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/18 18:36:07 ID:3vYPUOaQ0
見守るスレ即死

70 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/19 00:47:11 ID:tLNMFJbQ0
寝る前に捕手。
オヤスミ薮田さま。

71 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/19 07:13:44 ID:NoZq6jYC0
age

72 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/19 14:59:21 ID:0VriPuey0
保守。

73 :鉛とそれに似たもの  ◆1Y1lUzrjV2 :05/03/20 01:29:54 ID:i+Eah/r30
 (あいつ、あんなに足速かったか…?)
 息を切らしながら、小宮山は思った。今は走ることを諦め、早足で歩いていた。
 杉山とは一回りも歳が離れているので流石にすぐ追いつけるという自信はなかったが、
こうして足跡を辿っていけばそのうち巡り会えると思っていたのだ。杉山は全力疾走していたので
途中で足を止めると計算していた。しかし杉山の気配などまったく感じられなかった。
 先程聞いた杉山の奇声が耳から離れない。
 彼の破綻した精神をすぐに悟ってしまった。
 小宮山は自分の発言を心底悔やんでいた。
 無意識に宏之の名を呼んでしまったことがきっかけで、杉山は狂った。
 この異常な状況だ。理性を保つのは難しいだろう。それでも彼は自分と共に、本部の人間と戦う
決意をした。それなのに…。
 自分の言葉が、すんでのところで留まっていた杉山を狂わせたことは確かだった。
 『とどめを刺したのは俺なんだ』という自責の念に囚われた。
 全速力で走ったため、まだ息は整わなかった。しかし杉山の足跡を追うため歩は進めていた。
 (滅茶苦茶に走っているから、危ないな…。早く会わなければ…)
 小宮山は周りに気を配りながらも、ふたつの考え事をしていた。
 

74 :鉛とそれに似たもの・2  ◆1Y1lUzrjV2 :05/03/20 01:31:50 ID:i+Eah/r30
 もし、杉山に会ったら。
 どんな風に説得させるのか。
 彼は正気に戻れるだろうか。
 もし戻ったとしても、あの人物が宏之であったら、また同じ事を繰り返すのではないのか。
 だとしたら、これから先はどのような行動を取れば良いのか。
 
 そして、もうひとつ。
 
 『これ』をどう説明し、納得させるのか。

 (使うことはない、と信じたかったが…)
 袋の底をそっと触る。
 そこには鉛玉の感触があった。
 

75 :鉛とそれに似たもの・3  ◆1Y1lUzrjV2 :05/03/20 01:33:37 ID:i+Eah/r30

 (袋の底に、解りにくいように縫い付けやがって…)
 
 ―小宮山のコルトガバメントには、弾が入っていなかった、『ということになっている』。
 彼が使う当てもないと思い弾丸を探さなかったこと、本部の人間が面白がって袋に細工を施し、
弾丸をすぐに取り出せる場所に入れずに底の方に綿やボロ切れなどと一緒に縫い付けたことなど
さまざまな理由があった。
 雨宿りの最中、杉山が少しうとうとしているときに、袋を何気なく触っていて偶然発見してしまった。
 しかし、黒木の件で怯えている杉山にこのことを伝えるのがためらわれてしまったのだった。
 本部に突入する際に、どさくさに紛れて使おうなどと考えていたのである。きっと、そのときには
杉山もそんなことを気に留めずに突入すると思っていたからだ。
 

76 :鉛とそれに似たもの・4  ◆1Y1lUzrjV2 :05/03/20 01:37:46 ID:i+Eah/r30
 しかし…。
 (もし上手くあいつが正気に戻ったとして…。弾のことを告げたら、きっといろんなことが
フラッシュバックするかもしれない――。黒木のことや俺が向けた弾無しのコルトガバメントの感触、
なぜ今まで黙っていたのかなんてことも…。さっきのことがあるから変に刺激はできない…)
 小宮山はため息をついた。
 先程より足取りが重い。一歩一歩が、とても身体に堪える。
 自分の足が掌にある鉛玉のように思えた。
 全速力で走ったせいで、体力がかなり無くなってきている。
 それでなくても、精神的な疲労がかなり溜まっていた。
 (それでも、俺は…)
 歩かなければ。
 そう、言い聞かせた。
 
 …小宮山はそうでもしないと、もう自分はこのまま歩けないような気がしたのだ…。
 

77 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/20 10:21:27 ID:SD9McoZH0
保守

78 :代打名無し@実況は実況板で:05/03/20 21:40:47 ID:bJAmG1mC0
捕手

79 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/21(月) 12:36:31 ID:klUq3CvpO
そして保守
今日宏之先発かー

80 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/22(火) 01:37:41 ID:zwMwwbE+O
ドラバト&アテネ落ちた…orz

81 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/22(火) 17:13:52 ID:GTYGtQnh0
小川博

82 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/22(火) 17:14:48 ID:GTYGtQnh0
強盗殺人犯のOB小川博ならどうだ?

83 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/23(水) 12:35:26 ID:CPfNlgI4O
ほす

84 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/24(木) 07:27:54 ID:isoKMJlwO
開幕期待保守

85 :線上のアリア(1/4)  ◆Ph8X9eiRUw :2005/03/24(木) 23:15:42 ID:nXFfuks70
違う。違う違う違う違う。
その言葉だけがユウゴーの頭を支配した。
こいつと同じであるはずがない。そんなことあるはずがない。
俺は誰も殺さない。そんな方法でポジションを奪ったりしない。
そんな方法しかあるはずがない。そんなこと許されるはずがない。
「ちが・・・う」
呼吸音のほうが大きいくらいのか細い声が否定の言葉をようやく生み出す。
「俺は、そんなことはしない。違う。違う違う。」
もうすでに平下に向けて言葉を発しているのではなく
ただ自分を納得させるため、自分のためだけに言葉にして確認していく。
それでも、
「いいや、違いませんよ」
こいつの言葉一つであっさりとその自信が揺らいでいく。
「あんたならわかるでしょう?普通の方法でポジションを奪うことがどれだけ困難か。
絶対にわかるはずですよ。自分のここでのとるべき方法が」
「ち、が・・・」
喉が自分のものではなくなっていくようで、かすれた音を出すことしか出来ない。
こいつと違うということをわからせるためにはどうしたらいい?
俺は絶対にそんなことはしない。あるはずがない。
無意識のうちに両手を強く、手のひらに指が食い込むほど強く握り締めていた。
どれだけ力を入れ、神経すべてに命令を送り制御しようとしても
足の、腕の震えは自分の力では抑えきれなかった。
答えが欲しい。確証が欲しい。
じくじくとユウゴーを崩していく平下の言葉が
「自分が助かるために曽我部さん見捨てて逃げた人が、今更きれいごといっても無駄ですよ」
その一言で完全に砦を打ち砕いた。


86 :線上のアリア(2/4)  ◆Ph8X9eiRUw :2005/03/24(木) 23:18:04 ID:nXFfuks70
ユウゴーの頭にあのときの光景がフラッシュバックで蘇る。
背中で聞いた銃声、曽我部の倒れこむような音。あのときの自分は、そう、自分は。
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う。
「違う!」
自分の耳が悲鳴を上げそうなほどの声。それを号砲にするかのように
ユウゴーの身体ははじかれたように走り出した。
ただ一点、平下に向けて。
違う絶対に違う違う違う。こいつと一緒のはずがない。
こいつの言うことなど、そんなものはすべて否定する。
そう否定する。こいつなんて否定する。
こいつ自身を否定する。そのためには。

さきほどまで震わせることが出来なかった喉から咆哮を上げ
ユウゴーはそのまま迷うことなく平下だけに向かって突進していく。
その相手の急な動きにも平下は落ち着いて行動し、すっと右手の銃を構えようとした。
銃口がユウゴーに照準を合わさるその瞬間より少しだけ早く
ユウゴーはポケットの中身、戸部の徳用胡椒を平下の顔にぶちまけた。
蓋を緩めておいた胡椒瓶の中身は見事に相手に降り注ぎ、平下は思わず目をつぶる。
こんな反撃はさすがに予測していなかったようで、死を誘う穴はその行き場を失った。
もう一度、照準を合わせようとするが、こんどは大きなくしゃみの所為で手元が狂う。
それが定まるより先にユウゴーに飛び掛られ、平下はそのまま地面に押さえつけられた。
「違う!」
またユウゴーが叫ぶ。
否定する。違うと叫ぶ。否定する。こいつの言葉を、こいつを否定するために。
ユウゴーの両手が平下の喉に伸びる。そして、そのままぐっと手に力をこめる。
けほっと相手の苦しそうな呼吸音が聞こえるが関係なくそこを攻める。
さらに押さえつけるように全体重を手にかけ、ひねりあげるように指を食い込ませた。
指先に爪に柔らかな皮膚の感触。血だろうか、生暖かい液体の感触。


87 :線上のアリア(3/4)  ◆Ph8X9eiRUw :2005/03/24(木) 23:23:42 ID:nXFfuks70
その自分の手だけに力をこめて、そう、否定する。
もうそんな言葉を吐かせないために。こいつの存在を否定する方法は、ひとつ。
頭に浮かぶ言葉は、ただひとつ。
「ころ・・・っ!」
「殺し・・てやる、です、か」
自分の言おうとしていた言葉の続きは、自分の両手の所為で自由にならない平下の喉から出た。
小さく消え入りそうな声だったのに、それはユウゴーの耳にはっきりと届いた。
自分は、今なにを考えていた?
あわてて喉から両手を引き剥がす。
俺は、こいつを、殺そうとした?
平下の喉には赤黒い痣がうっすらとはりつき、爪が食い込んだところからは少し血がにじんでいた。
曽我部の喉にもあったような痛々しい痣。
ようやく呼吸が自由になった平下は、何度か咳き込んだ後ひとつまたくしゃみをした。
「やっぱり、同じじゃないですか」
その一言でスイッチが切れてしまったようにユウゴーはその場にへたりこんだ。

俺も同じ?自分を守るために殺そうとした。平下と同じ?
自分を守るためなんかじゃない。そんな正当っぽい理由ではない。
ただ、感情にまかせてこいつを殺そうとした。それは、こいつと同じ?
ならいつか、いつか自分もポジションのために誰かを殺そうなんて考えるようになるのか?
誰かを、仲間を、内野手を、こんな場所でも自分と笑いあってくれた福浦さんを。
違うっていってください、誰か、福浦さん、曽我部さん。俺は違うって。
頬を冷たいものが流れていく。それが汗なのかなんなのかははっきりとわからなかった。
平下が銃を構えて自分を見下ろしていることもユウゴーにはもうはっきりと認識できなかった。


88 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/24(木) 23:25:27 ID:+UYiIJH20
   

89 :線上のアリア(4/4)  ◆Ph8X9eiRUw :2005/03/24(木) 23:27:27 ID:nXFfuks70
「あんたなら、同盟を組めると思ってたんですけどね。
内野手殺してもらって全体の人数を減らしてもらおうかと思ったんですが」
暗い、銃口から覗く穴がしっかりとユウゴーを見据えているのに反応はない。
「違う。俺は違う」
機械的にそうおなじことをつぶやくだけ。
「さっきの約束、してもらえますかね。外野は守らないって」
「違う・・・。俺は、違う」
「そうですか。じゃあ、残念です」
照準を左胸に合わせ、思い直して額のあたりまで持ち上げる。
「田中の銃をはじいたのは防弾チョッキですか。それもいただけたらありがたいんですけど」
「・・・違う・・・」
それを返事としたのか、平下は残念そうな目でユウゴーを見、トリガーにかけた指に力を入れた。
額にしっかりと押し当てられていたため、少しくぐもった銃声が轟く。
反動でユウゴーの頭が後ろにのけぞり、それに流されるように身体も揺らぎそのままゆっくりと仰向けに倒れた。
音はそれただひとつで十分だった。
まだ熱のこもった銃をゆっくりとおろし、平下はまた小さくくしゃみをした。

ユウゴーから奪った防弾チョッキを身に着け、そのまま背を向けて歩き出そうとしたが
平下はなんとなくもう一度赤い血溜りの上に横たわるユウゴーに目をやった。
そして、さきほど彼が曽我部の身体にそうしたように
重力に逆らう力を失った腕を自分の肩に回し、立ち上がらせる。
担ぐ、というよりも引きずるようにユウゴーの身体を
さきほどまで彼が隠れていた民家の入り口に運び、そこに横たわらせた。
なんでこんなことをしているのだろう、という疑問が平下の脳裏に生まれる。
たぶん、似ていたからだ。自分と少し似ていたから。
ずっとずっと居場所を捜し求め、苦しんでいた姿が自分と同じだったから。
「でも、違うところがありますよ。決定的に」
もう一度だけユウゴーに視線をやり、じっとその姿を見てから背を向ける。
「俺は、あんたみたいな結末は迎えませんから」
またひとつくしゃみをして、平下は歩き出した。

【66ユウゴー× 残り24名】

90 : ◆Ph8X9eiRUw :2005/03/24(木) 23:29:53 ID:nXFfuks70
前回投下した即死スレ分サルベージしてくださった方
遅くなりましたがどうもありがとうございました。


91 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/25(金) 18:13:46 ID:q3ZdIopj0
職人さん乙です

92 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/25(金) 21:20:06 ID:splIKCcx0
感想推奨sage

平下暴れまくってんな
当初は割と早く死にそうだと思ってたが

93 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/26(土) 19:23:10 ID:Xu4jN3UA0
h

94 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/27(日) 21:47:27 ID:9L+3AIwB0
o

95 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/28(月) 23:40:43 ID:qPksAxLC0
一応捕手

96 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/29(火) 10:49:16 ID:zOeT2LkPO
ほす

97 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/29(火) 11:29:31 ID:mFqUYd9FO
ユー・・・


98 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/29(火) 22:42:27 ID:mFqUYd9FO
もういっちょ保守

99 :大丈夫なはずだ(1/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/03/30(水) 03:43:32 ID:v8O5grsB0
 小気味良い足取りで、ぐいぐいと大きな体を運ぶ。
草木の密集した、道と言うにも人間一人がやっと通れる森の中の隙間。
草の生えていない獣道の上、横から突き出した木の枝を勢いよく弾くと、付いていた雫が飛び散った。
里崎智也はそれを意に介さず、少し汚れのついた地図を眺めながら歩いていった。
 後ろを歩くのは堀幸一だ。周囲を気にしながらも、ときたまアクビで顔を歪める。
「ふぁ…」
「お疲れですか?」
「あんまり寝てなかったからな。大丈夫、先を急ごう」
「……急ぎたいんですけどね」
「ん?どした?」
里崎が足を止めた。
堀が里崎の背中越しに前をうかがうと、獣道が二手に分かれるのが見えた。
二つの道は数十mも行かないで曲がっており、その先がどうなるかは分からなかった。
左の道は若干傾斜が上がっており、右の道は少し下っているといったところだ。

「どっちが近いんだろう?スタジアムの方に向かうんだよな?」
堀が聞くと、里崎は唸りながら堀を向いた。
「方向だけなら右でいいんでしょうが…、見てください、今はこの辺りです。
 東の方がスタジアムです。でも禁止エリアが壁みたいに配置されてます。
  真っすぐ東に行くんじゃなくて、結局は回り込むように行くことになります」
「ふむ、要は左の道でも西方向に進むのでなければ、むしろ都合がいいのかな」
「そうですね、どうしましょうか」
堀は少し考えた後、手を打った。
「だったら二手に分かれて、様子を見てこよう。
 10分ぐらい歩いて、だいたいの進む方向を把握してここに戻る。
 それで、どっちに行くのがふさわしいか検討しよう」
「その方が確実ですね。そうしましょうか」

 右の道に進む里崎に軽く合図しながら、堀は左の方の道を歩き始めた。
相変らずの獣道。右に左に曲がりくねるのを早歩きで進む。
「やれやれ、磁石がないと方向がわからんな」
道の伸びる方向を磁石と照合しながら、ぶつぶつと呟いた。

100 :大丈夫なはずだ(1/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/03/30(水) 03:45:42 ID:v8O5grsB0
 しばらく行くと、獣道が消え、その代わりに短い草の茂る小さな空き地に出た。
森の中にポッカリ空いたようなスペースを少し不思議そうに見つめる。
「結局、行き止まりだったか。
 まだ10分には少し早いかもしれないな」
そう言って堀は踵を返した。

ガササッ

 脇の茂みから、少し大きな物音がしたのはそのときだった。
「誰かいるのか!」
驚いて音のした方向を向くと、反射的に腰を落として肩のマシンガンを構えた。肩が震えた
表情がこわばる。誰かいるなら一応は牽制になるだろうと、銃口を向けておいた。
茂みからは何も聞こえない。
堀の耳が一瞬だけ恐ろしいほどの静寂を聞いた後、地面から微かに泡の立つような音が聞こえた。
「誰もいないのか? 俺は戦いたくない。いるなら何か答えてくれ」
やはり返事はなかった。
堀は大きく息を吐いた。そしてマシンガンを抱えたまま、後ずさって元来た道を引き返し始めた。
 大きく息を飲んだ音が聞こえやしないかと、浅間敬太は口を塞いで息を殺していた。
(堀さん…)
堀には今日の午前中に会ったばかりである。しかし、答えることはできなかった。

 行く当てもなくフラフラしていた浅間は、誰かの足音とつぶやくような声を聞いて茂みに身を潜めた。
ほどなく現われたのは堀。
(良かった。堀さんだったのか)
堀は自分が行き止まりに出たのが分かったようで、落胆したような顔をしていた。
(あ、隠れていることもないか。堀さんなら安心だもんな。
 ……待てよ)
腰を上げようとしたそのとき、浅間の心に先ほどまでの自問が割り込んだ。
(本当に…信じられるのか?
 確かに堀さんは、将海さんが死んだのを悲しがっていたし。このゲームに反対していたけど。
 あれから何時間も経ってるんだよな…)
暗く沈んだ感じ。つい、さっき1人で感じていたあの感覚だ。

101 :大丈夫なはずだ(3/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/03/30(水) 03:47:07 ID:v8O5grsB0
(もしかして、何かあって心変わりしているかも知れない。
 ちょっと前に会った時は、悲しそうで少し頼りない感じだったのに。
 なんか今は、まるで吹っ切れたような顔だ…)
成瀬は目をつぶって顔を振った。
(考えすぎかなぁ? あの堀さんが、まさか人を殺そうだなんて)
「僕、殺人鬼だから…浅間さん、逃げないよね?」
(!!)
一瞬、成瀬の顔が目の前に現われた。
己を殺人鬼と誇らしげに笑いながら話す、あの顔だ。
(簡単に…変わってしまう。何が、原因かも分からないままで。
 俺にはそれが、わからない。判断出来る自信がない…。
 でも堀さんなら…いや、根拠は……大丈夫なのか……そんな……」
腰を上げようとしたまま、中腰の体勢をとっていた浅間の足がきしんだ。
もう一度しゃがみこもうとした瞬間、体はバランスを崩した。
肘から草に突っ込んで、なんとか体勢を立て直す。
「誰かいるのか!」
(あっ……)
そこには、こちらを睨みつけながら、マシンガンの銃口を向ける堀の姿があった。

(なんで、なんで銃を向けるんだ!?堀さん!
 俺は何もしない!)
そう言おうと思ったが、喉からは声など出なかった。
一言でも発すればその銃口が火を吹くのではないかと、恐怖が駆け抜けた。
すぐさま口を抑えた。
(堀さん、もし俺を敵だと思ったら、撃つんだろうか?
 俺だと分かったら、撃たないでくれるだろうか?)
声を上げればいい。しかし声は出ない。己の存在を、わざわざ示す必要があるのだろうか。
しかし、不審に思った堀が試しに一度でも引き金を引くかも知れない。
静かに声を殺し、しかし震えてあぶら汗が噴き出した。
目をつぶっていた。動けない。堀がまた何か言ったが、よく聞き取れなかった。
(もし堀さんが成瀬と同じく、人を殺すことを笑って言うようになっていたら?)
堀ならその可能性は低い。それは分かっていた。

102 :大丈夫なはずだ(4/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/03/30(水) 03:47:38 ID:v8O5grsB0
 ほどなく、堀はゆっくりとその場を離れていった。
浅間は口から手を離すと。大量に溜め込んでいた二酸化炭素を一気に吐き出した。
荒い呼吸から生まれてくるのは、苦痛にさいなまれる病人のような喉の音だった。
(なんで俺…こんなに不安がっているんだ?
 堀さんだぞ? さっきのは、警戒していただけなんじゃないのか?
 それが、銃を向けられただけで怖くて何もできないなんて…)

「浅間さん、逃げないよね?」
成瀬が笑っている。
ハッとすると目の前には草と木があるだけだ。
「うくっ…」
あのとき成瀬はためらいもなく自分に銃口を向けた。
必死で反撃をし、難を流れた。成瀬を非難もした。
(あのとき、成瀬に俺の言ったことは間違ってない。ただ…)
「怖かった。殺されることもそうだけど……ものすごく苦しくなった。
 成瀬はそんなことするやつじゃないって思ってたのに。
 俺は…信じてた。堀さんも、成瀬だって。みんな」
堀が厳しい顔つきで銃口を向ける姿が脳裏に映った。
「そうだ。だから…裏切られるのは、嫌だ……俺は
 心が締め付けられて、苦しくて、俺がみんなを嫌いになっていくから…
 だから、堀さんだから余計に…そうなったら辛いから…何もできなかったんだ」
浅間は悔しかった。怯える自分の不甲斐なさが。

「これじゃ、俺、だめになる。
 西岡にも、金澤にも、もう普通に信じられなくなる。
 裏切られたくなくて、きっと逃げちゃうだろうから」
胸に手を当てウンと頷くと、浅間はおそるおそる堀の行った後を追い始めた。
「堀さんに会って、堀さんは信じても大丈夫だって、確かめるんだ。
 きっと堀さんなら……
 ……。
 …大丈夫なはずだ」

103 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/30(水) 23:49:02 ID:JkXj7vTjO



104 :番外 愉快なカモメたち11(1/2) ◆vWptZvc5L. :2005/03/31(木) 01:51:42 ID:oH9R2yMY0
「マー君、起きて!起きてってばっ!!」
リーンちゃんが必死になってマー君の体を揺らしている。それでもマー君は動きださない。
リーンちゃんはパニックを起こしているようだった。
ズーちゃんはその様子にたまらず、間に割って入った。
「リーンちゃん、落ち着いて!僕らが無事なんだから、兄ちゃんも大丈夫だって。
 ケガもおでこ切っただけみたいだし、きっと気失ってるんだよ。
 だからリーンちゃんも冷静になって。ね?」
泣きそうな声のリーンちゃんをなだめる。
(どうしよう、僕がしっかりしなきゃ。えーっと、こういうときは救急車?
 いや、ここまできたら一度マリンまで戻った方が早いか。でも車動くのか…??)
腕を伸ばしてキーをひねりなおす。低いエンジン音がうなりを上げた。
「動いたっ!…リーンちゃん、いっぺんマリンまで戻ろう。
 僕に考えがあるんだ。兄ちゃんは絶対に僕が助けるから」
運転席の座席を押し倒して、マー君の体を後ろに追いやると、
ズーちゃんが代わりに運転席に乗り込んだ。
後部座席にはマー君が寝っころがっている。

105 :番外 愉快なカモメたち11(2/2) ◆vWptZvc5L. :2005/03/31(木) 01:52:39 ID:oH9R2yMY0
「…ズーちゃん、運転できるの?」
その様子を呆然と眺めていたリーンちゃんが尋ねた。
3歳のズーちゃんが免許を持っているわけがないのはわかっている。
要は運転できるかできないかが重要なのだ。
「いつもリリーフカー運転してるから大丈夫だって……たぶん」
その返答にリーンちゃんは不安を覚える。
「えっと、アクセルは…これかな?」
ズーちゃんがぐっと踏み込むと、車が急発進した。
急にスピードを出したせいでリーンちゃんの体が座席にたたきつけられる。
リーンちゃんの不安は見事に的中した。ズーちゃんの運転は荒すぎる。
マー君の無免許運転は疑惑が残るが、ズーちゃんは正真正銘の初心者らしい。
「止めて」
「へ?」
リーンちゃんの押し殺した静かな声に、ズーちゃんはアクセルから足を離した。
「もう見てらんない。お前な、堀の150号記念ピンバッジやるから運転代われと。
 運転ってのはな、もっと安全であるべきなんだよ。対向車線すれ違った奴といつ事故ってもおかしくない、
 轢くか轢かれるか、そんな雰囲気じゃ困るんじゃねーか。3歳児は、すっこんでろ!」
リーンちゃんだって僕と1歳しか違わないじゃないか、と言い返したかったが、その迫力に押し黙る。
(ヤバイ。この口調、本社にいたときと同じだ。これは本気で怒らせちゃったか?)
とにかく、ここは逆らわない方が身のためだと思って、ズーちゃんは素直に運転席を譲った。

(それにしても、リーンちゃん立ち直り早いな…)
ハンドルを握るリーンちゃんを横目に見ながら、ズーちゃんはそう思った。


106 :代打名無し@実況は実況板で:2005/03/31(木) 12:37:38 ID:tHwyDBj6O


107 :代打名無し@実況は実況板で:職業野球暦71/04/01(金) 03:44:35 ID:sB6og2zW0
保守

108 :代打名無し@実況は実況板で:職業野球暦71/04/01(金) 13:14:12 ID:7axHcfqYO
(○〜○) 保守ぬるぽ

109 :代打名無し@実況は実況板で:職業野球暦71/04/02(土) 00:47:38 ID:88JZxkDy0
初芝の眼鏡がキラリと光った。

110 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/03(日) 00:39:44 ID:9qIV8LlM0


111 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/03(日) 21:40:56 ID:wKanSvFQO


112 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 15:16:20 ID:QQYgEbI6O


113 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 15:38:50 ID:8eOl6ue40
s

114 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 16:32:48 ID:+KoJgV6G0
u

115 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 20:42:46 ID:BsA/DgRsO


116 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 21:15:33 ID:cBBLcHKE0


117 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 22:27:08 ID:ymzbIfaC0
i

118 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 22:33:31 ID:/pZHk1Tn0
b

119 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/04(月) 22:47:43 ID:z1taWZcf0
a

120 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 00:23:16 ID:rvDSyh3K0
k

121 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 02:23:17 ID:0yM7OnzM0
i

122 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 10:15:30 ID:DAqIbESa0
y

123 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 11:07:14 ID:rvDSyh3K0
O

124 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 12:30:51 ID:00c+S1Z2O
s

125 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 14:18:17 ID:HN+XZgWlO


126 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 17:13:59 ID:UZaBqf3h0
i

127 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/05(火) 22:44:00 ID:wlhz2h0A0
GJ!

128 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/07(木) 06:55:33 ID:dkx88Q96O
職人さんまだかな?
とりあえず保守

129 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/07(木) 14:15:26 ID:bYmtxNNSO


130 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/07(木) 19:24:10 ID:iS2FLMy3O


131 :折り重なる隙間から(1/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/07(木) 21:31:31 ID:ZEv/t80i0
 静かに、静かに、森の中を進む。
浅間敬太は茂みに身を隠しながら、獣道の脇を行く。
土に手を汚すことも今は気にならず、四つん這いで獣のように手足を動かす。
茂みの隙間に堀幸一の姿がちらちらと見える。
その頭を少し上の、茂みの密度の薄い所に出せば堀からは簡単に彼が見えるだろう。
「大丈夫なはずだ…
 堀さんなら…きっと…」
顔を出そうとする。
しかしその首は肩をすくめるような体勢のまま硬直してしまっていた。
喉の管は狭められ、呼吸が何度か詰まった。
僅かな隙間に映る堀は、険しい顔でマシンガンを抱えているのだ。

(…どうも、誰かいるような気配がある…しかし…)
堀は頻繁に周囲を振り返っては、少しずつ道を引き返していた。
(なぜ、姿を現さない? 何かする気がないなら、追ってくる必要はない。
 考えられるとしたら…このマシンガンを警戒しているとしか…)
もう一度、神経を研ぎ澄まして周囲を見渡した。
それらしい影は見えず、しかし漠然と誰かいるような気配がするのだ。
(やはり思い過ごしなのか…?しかし…)
答えの出ない問答に、堀は頭をかきむしりながら呟く。
「おい、いるなら出て来い。俺は戦いたくないんだ。
 それ以上隠れているなら……」
(しかも疲れてるんだよ。ああ、もう、勘弁してくれ!)

 浅間が再び息を呑んだ。堀の小さな呟きは低い声で、怒りを含むようだった。
心なしか目が座っているように見える。
(隠れているなら、どうするって!?
 やめてくださいよ、堀さん! 俺は何もしない!
 ただちょっと…気持ちの整理が付かなくてこうしてるけど…)
堀が構えたままのマシンガンがちらりと見えた。
銃口は自分に向いているわけではないが、背が震える。
堀の視界の外に進もうと、じりじりと茂みの間を掻き分けた。

132 :折り重なる隙間から(2/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/07(木) 21:35:51 ID:ZEv/t80i0
 堀が足を止めている間に、浅間は堀より前方に来ていたことに気づいた。
堀はまだ自分の後方にばかり気をとられているようだ。
ゆっくりとした歩調で、何度も振り返りながら進む堀。
それと一定の間隔を空けながら、その前方を浅間も進んでいた。
 しばらく行くと、茂みの向こうの獣道がもう一つの道に合流していた。
同時に、その道と今まで来た道を分ける木の陰に人影があるのを、浅間は見つけた。
「え…? 里崎さん?」

 のんびりと、誰かを待つように空を眺める里崎が立っていた。
(堀さん、まだかな…)
首を回してほぐしたり、なんともリラックスした様子で佇んでいる。
浅間が気づくと同時に堀も、里崎との待ち合わせ場所の近くに来たのだと気づく。
(里は…いるのか?)
目を凝らすと、木の陰にそれらしき人影が見える。
(やばいな…変なお客さんを連れたままだ…
 ただでさえ得体の知れない奴だってのに…)
堀は足を止め、木を背にするようにしてもう一度辺りを見回す。
(どうする…?
 里を呼ぶか? 2人組みと分かれば、逃げるかも…
 いや、里が驚いて顔を出したら、今度は里が危なくなるかも。
 奴に不用意に里のことは知らせる必要はない。
 一気に里に駆け寄って逃げるか? いや、背を向けたら攻撃されるかも知れん。
 どうする…?)

 堀は必死で思考を巡らせる。一歩も動かずに。
時折、里崎の方をチラリと見ながら、辺りに視線をやる。
(堀さん…身を潜めて、里崎さんの様子を伺ってる…
 すごく険しい顔で…。
 まさか、撃つ気じゃないよな!?)
浅間はその光景を見つめていた。思わず大量に息を吸うと、喉に空気がつかえる。
すぐさま、口で抑えて飲み込んだ。

133 :折り重なる隙間から(3/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/07(木) 21:38:51 ID:ZEv/t80i0
 茂みの隙間から光が差し込み、浅間の右目の周りだけを照らす。
まばたきを忘れたように目を見開く。折り重なる葉の隙間からではハッキリとは見えないのだ。
(さっきは戦いたくないって言ったのに…
 堀さん、何をする気なんだよ?
 このゲームに乗っちゃったんじゃないでしょ? 堀さんに限って。
 そんなこと止めて、里さんに普通に話しかければいいじゃないですか!)

(どうするか…)
堀が辺りを見回した。もう何度も繰り返した。
(どうするんですか…?)
浅間は息を殺してそれを見つめる。
(よし…)
堀はマシンガンを握り締めた。
(堀さん…、もし掘さんがそうなら…)
浅間は身を乗り出した。

「あー、堀さん遅いなー!」
しびれを切らした里崎が叫ぶ。
地面を蹴りつけ、泥が跳ねる。堀は駆け出した。
(里、このバカ!
 とにかく早くあそこへ!そしたら里を捕まえて、さっさと逃げる!)

堀が里崎に向かって駆け出していく。
浅間はまた息を詰まらせ、口をパクつかせる。
(あ…あ…)
堀が里崎に迫る。
「里…」
堀が言いかけたそのときだった。
「里崎さん、危ない!」
浅間は茂みを飛び出しながら、リュックに手を突っ込んだ。
「な!」
堀の前に現われたのは、左手にナイフを持ち、顔を真っ赤にした浅間だった。

134 :折り重なる隙間から(4/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/07(木) 21:41:59 ID:ZEv/t80i0
「あ、浅間…お前だったのか…な…」
なんで姿を現さずに近くにいたのか、そう言いかけたのを遮り浅間は叫ぶ!
「堀さん!止めて下さい!
 今、里崎さんを殺そうとした!
 それ以上進まないで!堀さんはそんなことをする人じゃない!
 信じてるから、進まないでください!」
「はぁ?」
訳が分からないといった顔の堀。
声がするので堀かと思ったら、浅間も加わっていた里崎は尚更である。
さらに浅間は叫ぶ。
「ずっと見てました!
 堀さんは将海さんのことがあるから、このゲームには乗らないと思ってた。
 でも…何時間もしないうちに、こんなに変わってしまうなんて!」
「おいおい、浅間。何を言ってるんだ?
 お前こそ…」
いるならさっさと声をかけてくれ、という言葉を浅間はまた遮った。
「もう俺は、裏切られるのは嫌なんです!
 さっきまで信じてた人達が殺し合おうとするのは、見たくないんです。
 近寄らないでください!
 それ以上近寄って俺を撃とうとするなら、このナイフで…!」
「浅間、いいか。落ち着け!
 とりあえず俺の話を…」
「近寄らないで!」

 いつの間にかかすれてしまった声を振り絞るように浅間は叫ぶ。
視線は里崎も、堀すらにも向いていなかった。
「浅間、やめろ。堀さんは…」
里崎が言葉を発した。またもや浅間は言葉を途中で遮る。
「里崎さんは下がっててください!
 堀さんはマシンガンを持ってる!」
堀と里崎は、少年を前に途方に暮れた。

135 :蜃気楼  ◆1Y1lUzrjV2 :2005/04/08(金) 00:37:13 ID:LGJgeXff0

 杉山は走っていた。その表情は幸せそうだった。
 まるで少年のような笑顔で、彼は生死を懸ける場にいた。
 チームメイトが命を落としているこの場に。
 死も生も理性も何もかも破綻した杉山には、もうそれはどうでも良かったのかもしれない。
 いや、それを感じることができなかったのだろう。 

 このまま、どこまで行こうかな。
 ああ、とりあえず出発地点に戻ろうかな?
 あそこに行けば、きっと放送で名前を呼ばれた人達が『待っている』んだ。
「杉山さん、結構最後まで残ってたじゃないっすか〜」
「俺達早々とこっち来ちゃいましたよ」
 浦和組の面々が次々に声をかけてくる。皆笑顔だ。
 あ、澤井さんだ。
「俺は面倒臭いから、先に殺される役がいいですって言ったんだよ」
 やっぱりそうだったんだ。
 俺に本当のこと教えてくれないなんて、皆意地悪なんだから。
 小宮山さんも早く言ってくれれば良かったのに…。
 金澤だって、ムキにならないで、もうこっちへ来ればいいのに…。
 あ、でも、皆ちゃんとした武器持ってたよな。俺だっていい武器持ちたかったぞ!
 その方がなんかカッコイイもんな。どうせ嘘なんだから。
 バキュンバキュン撃ちまくるんだぜ、カッコよく。
 どうせ嘘なんだから。

 そんなことを考えながら、杉山は走っていた。
 

136 :番外 園川一美と愉快なコーチたち21(1/3) ◆GDAA.BMJxc :2005/04/08(金) 00:38:25 ID:6+8KO0z30
「いやあ、だんだん寒くなってきたよねえ。」
「本当ですよねえ。」
浦和球場からほど近くにあるマリーンズ寮で、荘と吉鶴はくつろいでいた。
「それにしても今日はいろいろあったねえ。」
「そうですねえ。久しぶりに荘さんの球を見られたし。」
「ははは、僕も吉鶴くんのバッティングを久々に見られたからね。」

のんびりとくつろいだ後、荘はカバンの中から『秋季キャンプのしおり』取り出し、
間に挟まっている紙を抜き出した。
「そうそう、さっき言っていたのだけど。」
吉鶴は荘から紙を受け取り、改めて秋季キャンプの場所を確認した。
「ええと、沖縄県…。」
吉鶴の声が止まった。
「どうしたの?」
「…ここってどこですか?」
吉鶴はキャンプ地の住所を指し示した。書かれている住所は、吉鶴には全く心当たりが無かった。
「う〜ん、僕も知らないな。」
そう言うと、荘は本棚から日本地図を取り出し、テーブルの上に広げた。
そして地図をぱらぱらとめくり、しばらくして紙に書かれた住所と同じ場所を探し当てた。
「ここだね。」
しばらく吉鶴はその場所を見入っていた。
「ここって沖縄本島からずいぶん離れていますよ?こんなところでキャンプできるんですか?」
「さあ…?」

二人はしばらく考え込んでいたが、
「ここで考えても仕方ないし、とりあえず電話をかけてみようよ。」
そう言い、寮の電話を借りて、荘は紙に書かれている『緊急連絡先』の番号に電話をかけた。

137 :番外 園川一美と愉快なコーチたち21(2/3) ◆GDAA.BMJxc :2005/04/08(金) 00:42:13 ID:6+8KO0z30
吉鶴はお茶を淹れながら、荘の会話を聞いていた。
「もしもし、荘です。…いや、荘ですって、荘。…そう、荘ですよ。」
(荘さん、わざと言っているのかな…。)
吉鶴は茶を飲みながら、そんなことを考えていた。
「だから荘ですよ、荘。マリーンズの荘です。」
(最初からマリーンズって言えばいいのに。)
「そう、そうそう。荘です。」
(わざとだ、絶対わざとだ)
「ええ、今浦和にいるんですけど。」
(あっ、普通の会話になった)
「そうです、これからそっちに行きますよ。」
吉鶴は茶を飲み干し、お代わりを淹れた。
「そうですか。分かりました。それでは。」
荘は電話を切った。

「荘さん、どうでしたか?」
「うん、最初は話が通じなかったけどね。」
「そりゃあ・・・。」
そうでしょうね、というセリフを飲み込んで、吉鶴は荘の話に耳を傾けた。
「待っているから早く来て。だってさ。」
「よし、福澤さんが戻ってきたら、早速出発しましょう!!」
「うん!!」

二人は二日遅れで始まるであろう秋季キャンプに思いを馳せていた。
もちろん、二人は園川のことなぞすっかり忘れていた。


138 :番外 園川一美と愉快なコーチたち21(3/3) ◆GDAA.BMJxc :2005/04/08(金) 00:44:19 ID:6+8KO0z30
同じころ、電話口の向こうで一人の男が頭を抱えていた。
「全く、そうそうそうそうって何のことと思ったら、『荘』だったのかよ・・・。」
男は途方にくれていた。
「しかし・・・、全然連絡が取れないと思っていたら、浦和にいたとはな。」
しばらくの間、男はぐったりとしていたが、
「ん、浦和?」
男は突如立ち上がり、受話器をとった。
「ひょっとして・・・。大谷が・・・。」
そう独り言をしながら、ダイヤルボタンを押した。


「もしもし。私だが・・・。」

139 :蜃気楼・2  ◆1Y1lUzrjV2 :2005/04/08(金) 00:44:22 ID:LGJgeXff0
 
 杉山の視界に、誰かが現れた。それは偶然、杉山と同じように『自分を失った』者だった。
「ウ…ウウッ」
 苦しげな声。杉山は足を止める。
 虚空を描いたような瞳で、その存在を確認する(既に彼は夢うつつのような状態だったので、
確認する意志があったかどうかは定かではないが)。
「ウ…、命令…ナイ…」
 絞り出すような声。
 杉山の目の前にいたのはサブローだった。
 加藤を、神田を、塀内を殺したサブローだった。
 宏之に撃たれ、殺人サイボーグと化したサブローだった。
 しかし、杉山は知らない。
 何も知らない。
 知ったとしても、嘘だと思うだけだ。
 杉山は優しく微笑んだ。
 

140 :蜃気楼・3  ◆1Y1lUzrjV2 :2005/04/08(金) 00:50:03 ID:LGJgeXff0

 サブローさんも知ってるのかな? この嘘については。
 そうだとしたら、何で俺にだけ話してくれなかったんだろうなあ。
 ちょっとその辺聞いてみよう。
 
 まるで無防備に、杉山はサブローに近づいて話しかける。
「サブローさんは知っていたんですか? この嘘を」
「……」
 杉山を探るように見るサブロー。それを見て杉山は笑った。
「ああ、良かった。俺だけじゃなかったんですね。心配しましたよ」
 そう言ってポンと肩を叩こうと手を伸ばした。
「ウワアッッ!!!」
 サブローが奇声を発する。杉山は驚いていた(ように見えた)。
「敵…敵…、触れるな」
 サブローは肩に触れようとした杉山を『敵』と認識してしまったようだった。
 ギラギラした目で、杉山を見つめる。
「嫌だなあ。もうやめましょうよ。それともサブローさんが俺を殺す役なんですか?」
 杉山はサブローに微笑みかける。その表情は穏やかで、サブローを見ている目がもう
はっきりとはしていなかった。
 サブローの変化にも、湧きあがった殺意にも気付かず彼はまた手を伸ばす。
 

141 :蜃気楼・4  ◆1Y1lUzrjV2 :2005/04/08(金) 00:55:06 ID:LGJgeXff0

 ―シュッ、という何かが切れた音。
 視界には綺麗な赤い放物線。

「あれ?」
 杉山は一瞬何が起こったのか解らなかった。
 まだ正気に戻れなかった。
 夢だとまだ思っていたから。
 
 その赤い放物線が何かを認識する前に、杉山の身体はドサリと倒れた。
 胸の辺りに痛みが走る。なんだか生暖かい感触がする。
 ウッ、とうめくとサブローは素早く杉山の左手首に綺麗な線を入れた。
 一筋の赤い、死への誘い。
 サブローは何か苦しげに声をあげると、杉山を残してふらふらと歩き始めた。

 杉山は何が起こったのか解らず、ただ「胸と手首が痛いなあ」と感じていた。
 
 ―ああ、俺ここで殺される役なんだ?
 だったらサブローさんもそう言ってくれればいいのに。
 そうしたら俺、もっといい『演技』するのになあ。まあ、素人だけどさ。
 にしても不意打ちなんてちょっと反則ですよ、サブローさん。
 なんだか様子がひどくおかしかった気が…、まあ、それも演技かな。
 だって嘘なんだし。
 これ全部が。
 殺し合いとか、そういうもの総てが。
 
 きっと目覚めたら、さっきみたいに。
 仲間が笑いながら種明かしをしてくれるさ。
「杉山さん最後までバラされなかったんですね」なんて言われるかな?


142 :蜃気楼・5  ◆1Y1lUzrjV2 :2005/04/08(金) 01:02:59 ID:LGJgeXff0
 眠気を感じて、目を閉じる。
 すると目蓋の裏にはさまざまな光景が映った。ひときわ印象的に、浦和の球場の光景が映る。

 杉山は試合中にブルペンで球を受けていた。
「もういっちょお願いします」
 そう尋ねる若いピッチャー(浅間のようだった)の後ろの方で、電車が大きな音を立てて通過していく。
 日差しが気持ち良い。快晴だ。
 誰かがヒットを打ったのか。歓声が聞こえる。
 途中、中年男性の愛ある野次も飛んで、杉山は苦笑する。
「杉山さん、次投げますよ」
「ああ」
 そう軽く答えて、球が来るのを構えて待つ。
 ―スパッ。
 ミットに良い音を立て、球が飛びこんできた。

 その音と同時に、先ほどの赤い放物線が甦る。 
 杉山は現実と空想の区別が出来なくなっていた。
 今の自分の身体が、『どっち』にあるか解らずにいた。
 目蓋が重い。もう目を開けられない。
  
 杉山は薄れゆく意識の中で、思った。
 
 急に…すごく眠くなってきた。もう目が開かないぞ…?
 あれ、嘘だっていうのに意識が遠くなる。
 眠る瞬間みたいな感じじゃないぞ、これは。
 何もかも嘘だっていうのにすごいリアリティだなあ。

 まるで本当に死ぬみたいだ…。

 
【93杉山俊介× 残り23名】

143 : ◆1Y1lUzrjV2 :2005/04/08(金) 01:12:09 ID:LGJgeXff0
120secエラーが出てしまって待ちながらの投下になってしまいました_| ̄|○
きちんと(1/5)と表記して投下すべきですね。◆GDAA.BMJxcさん間に挟むような
感じになってしまいすみませんでした。

144 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/08(金) 14:52:44 ID:qWJ88Yl10
職人様GJです!
杉山・・・・゚・(つД`)・゚・
ある意味幸せに死ねたんだろうなぁ・・・・。

145 : ◆GDAA.BMJxc :2005/04/09(土) 09:18:30 ID:uvLcbZp80
>>143
うわ、かぶってたんですか。スイマセン。
しかし120秒規制はきつい・・・。

146 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/10(日) 14:30:48 ID:EB6RSjeb0
ほす

147 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/10(日) 23:00:03 ID:gnycHiu00
さらに保守

148 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/10(日) 23:08:38 ID:T5xoJlXe0
荘さんクソワロタ

149 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/11(月) 20:07:56 ID:eymZHz+u0
h

150 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/12(火) 23:16:45 ID:MC7grNK50
a

151 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/12(火) 23:39:47 ID:ZXV3B/Np0


152 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/13(水) 00:39:27 ID:XfFIQ4bi0
s

153 :代打名無し@実況は実況板で :2005/04/13(水) 07:08:14 ID:eD0Yiy9m0
流れ切ってスマソ
見守るスレ立ててもらいました。

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ4
http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1113322101/

154 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/14(木) 08:14:36 ID:etAHIzDtO


155 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/14(木) 21:15:23 ID:ro38ABUN0
U

156 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/15(金) 00:02:06 ID:JET3UBYUO


157 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/15(金) 00:33:02 ID:5Zv+VNqB0
U

158 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/15(金) 02:57:24 ID:nbQXFBwX0
u

159 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/15(金) 02:57:43 ID:SWXO99QM0
Z

160 :スクリーンショット(1/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/16(土) 00:55:30 ID:OtzmxBvo0
「はやく!いきましょう!」
「待って待って、急ぐのはいいけど周りへの注意は怠っちゃだめだよ」
腰の高さまであるものも多い雑草と背の低い木を、ザクザクと踏みしだき成瀬善久は進む。
その後を汗を拭いながらついていくのは初芝清だ。
その大きく重そうな体からは考えられないほど、その足音は静かだった。
道など全くない森の中だったが、歩く方向に大した自由度はない。
手を広げればどこかが木の幹に触れるほど密集しているのだ。
「ほうこうは、こっちであっていますか?」
「ああ、とりあえず東へ森を突っ切っていけばどこかの道に出るはずだ」
二つの影は段々と森の中へ消えていく。
――ぁぁ…
「?」
「あ、いま」
「誰かの叫び声か?そんなに遠くじゃない」
「いきましょう、だれか、けがしたのかも」
「うむ」
右肩をピクリと上げて背にかかっていた袋を背負いなおすと、成瀬は歩調を速めた。


「近づかないで!
 それ以上近づくと、ささ、さ、刺しぃます!」
浅間敬太が目を真っ赤にして頭を振る。
目線だけは堀幸一の顔にくっついたように離れなかった。
「浅間!落ち着け!ほら!」
堀はマシンガンを無造作に地面に落とした。
「ほら、俺は今何も持ってない!
 これで分かるだろう!俺は」
堀は両手の手の平を開いて見せた。
同時に少し後ずさる。
「なな!? そんな簡単に落とすなんておかしいですよ!
 何か企んでるんじゃないですか?信じられない。
 今、里さんを殺そうとしてたのは見てたんですからね」

161 :スクリーンショット(2/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/16(土) 00:59:01 ID:OtzmxBvo0
「いやそれは変な奴が…まぁお前だと思わなくて、
 お前が追ってきていたから、そのまま里崎を連れて逃げようと思って…」
「どうやって信じればいいんですか!?
 そうだって証拠は…」
「浅間!しっかりしろ!」
横から叫んだのは里崎智也だった。
つかつかと浅間に近寄ると、左腕のナイフの刃先に立ちふさがった。
「つらいぞ…人を傷つけたら。
 あいつも、そうだった。悩んでた。
 お前がどうして苦しんでいるのかは知らないが、それは下ろせ」
「あ、あ…
 いや、このナイフは身を守るためで…」
「分からないか?」
里崎が一歩進んだ。ナイフの刃先がユニフォームにわずかに触れる。
「あ…!」
浅間は反射的にナイフを引いた。
「誰も信じられなくなったとき、誰かを傷つけることを正しいと思いたがってしまうんだ。
 それが正しくないのは分かってるのに。
 傷つけられるのが嫌で、いっそのこと先に傷つけてしまうようになるんだよ…
 そして一度傷つけてしまったら…ずっとずっと辛いぞ…」
「あ、あ、あ…」
浅間はナイフ刃先を下に向けた。
力なくうなだれる。しなだれて、両腕はわずかに振り子の動きをする。

 横にいた堀が落ち着いた口調で、ゆっくりと浅間に話しかけた。
「何があった? 今朝会った時は、西岡を探すって言ってたじゃないか」
「俺は…弱い人間です。今も、胸の中がグチャグチャになってて。
 本当に、すいません…」
「弱いのは俺たちも一緒さ……本当に押し潰されそうな時は、しょうがないときもある。
 気にするな。そんなことで責める気はない」
「笑ってたんです…あいつは。 俺を殺すって言いながら」

162 :スクリーンショット(3/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/16(土) 01:02:31 ID:OtzmxBvo0
「誰が?」
堀の口調が思わず緊張を帯びた。
「…成瀬……そんな奴じゃないと思ってた。信じてた
 雅英さんは背番号を見ただけだったけど、あいつはハッキリと顔を見ました。
 あいつは笑って、銃を向けました」
「成瀬が…」
里崎が眉をひそめ、口を歪ませた。
「そのとき、俺、なんとか逃げたんです。
 でも、そのあと何度も成瀬の顔が浮かんでくるんです。俺の目を見て笑ってる。
 そしたら、西岡だって信じられるのかとか思えて、誰にも会いたくなくて、
 堀さんを見かけて、堀さんなら大丈夫だと思ったら、また成瀬の顔が浮かんで…」
浅間の体が少し震える。ナイフはまだ強く握り締めていた。
「信じてもいい人って、どうすれば見抜けるのかと思って…
 俺は、本当に弱くて…弱っちくて…」
「でも、お前は俺を助けようとしてくれたんだろ?」
「え?」
顔を上げると里崎が笑っていた。
「なら大丈夫、まだお前は全然大丈夫だよ。
 まずは、自分を信じろ」
「俺…俺を…」
そういえば、そんなことはずっと忘れていたと浅間は思った。
初めて聞いたような、でもずっと知っていたような感覚を覚えた。
目の前の里崎の笑い顔は、彼を苦しめたあの笑い顔とは確かに違うもので――

――ガササッ
浅間の背後から物音がした。瞬間、三人は振り向く。
「だ、だいじょうぶですか?」
勢いよく、息せき切らしながら茂みから出したその顔は。
「な、成瀬?」
里崎と堀が思わずその名前を口にした瞬間、二人の前の少年が金切り声を上げた。
「ああああ!ああああ!うわああああ!」

163 :スクリーンショット(4/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/16(土) 01:06:45 ID:OtzmxBvo0
 ナイフを持った左手をぶんぶん振り回す。
自分の体に触れないようとか、そんなことは考えもしない。
ただひたすらに、目の前の成瀬か、はたまた目に映る成瀬の笑い顔かを切り刻もうとする。
浅間は駆け出した。
ナイフを振り回しながらバランスを崩して、わずかな距離をジグザクに駆けるようになる。
「ああ!」
成瀬が体を縮めて逃げようとしたその瞬間、まさに成瀬の体にナイフが達しようと振られる。
 白い塊が飛んできて、浅間の左腕を包み込むのに刹那の時間も置かれなかった。
何かが割れる音と共に、白い塊に押されて浅間の左腕は成瀬に届かない。
「ぐぁっ!」
バランスを崩し浅間はよろける。
「だから注意は怠るなって…」
支給の袋のひもを持ち、白い袋を振り子のように揺らす初芝の姿があった。
「そんな初芝さんまで!
 あいつは、危ないんだ!みんな、殺される!殺される!」
体勢を立て直した浅間は叫びながら、再び突進を開始する。
突然のことに一瞬固まっていた里崎と堀だったが、堀がハッとして声を上げる。
「浅間!やめろぉぉ!」

 浅間はナイフを振り回した。
振り回して、あの成瀬をどうしたいのか分からなかった。
ただ危ないと思った。怖いと思った。だから手を振り回す。ダダッ子のようだった。
胸でうごめくグシャグシャは、更にごった返して生き物のようにうごめいた。
成瀬は笑っているのだろうか。まだ笑っている。よく見ると背景は今朝の小屋の中だったが。
また怖くなった。振り払うようにナイフを振り回す。
 左腕に何かの抵抗を感じた。よく見るとナイフの先が見えなくなっていた。
頭を掴まれた。成瀬だろうか。更にジタバタと手を動かそうとするが、動かない。
ナイフが何かに引っかかっているようだった。動かない。
(あれ?)
少し前方で、成瀬が怯えたような顔で何か叫んでいた。無傷のようだった。
それにしても体が前に進まない。
「浅間!」

164 :スクリーンショット(5/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/16(土) 01:11:20 ID:OtzmxBvo0
 浅間の左手が赤く染まっていた。
浅間には不思議でしょうがなかった。
頭を掴んでいた手が、少し力を緩める。
その手はゆっくりと動く。
そして、浅間の頭を撫でてきた。

 フッと浅間は我に返った。ナイフは何かに刺さっていた。
赤く鮮やかに赤く、それが浅間の目を更に覚ました。
頭を撫でながらその人は笑っていた。
浅間は力なく、青ざめた顔で立ちすくんでいた。
「浅間…なに、気にするな。
 しょうがないときも…ある……」

「堀さん!」
「ほりさん!?」
「堀いいいいいぃぃぃッ!!」

浅間に寄りかかるように崩れ落ちた堀幸一は、それでも笑っていた。

165 :虫の知らせ(1/2) ◆vWptZvc5L. :2005/04/16(土) 03:15:01 ID:oL+N7leT0
日もだいぶ傾いてきた。夕暮れ時が急ぎ足で近づいてきている。
ついさっきまで3人で行動していたから、一人がこんなに心細いものだなんて忘れていた。
戸部浩は市街地から抜け出そうとして北へ向かって歩いていた。
どうもあの辺りは人が集まっいて危険らしい。ユウゴーにも戦いの場所には行くなと念を押された。
だから今はそれに素直に従って、どこか避難できそうな場所を求めてさまよっている。
結局、ユウゴーを説き伏せることなどできなかった。
ひたすら逃げ延びようとしている自分と、戦いに挑もうとしているユウゴー。
どちらが正しいのかなんてわからない。体を張ってでもあいつを止めるべきだったのかもしれない。
でもきっとあいつにはあいつの、自分には自分のやるべきことがあるんだろう。

(それにしてもなぁ…)
戸部は背負った荷物に意識を傾ける。
(あいつ、こんなもの押し付けやがって。嫌がらせか?)
リュックからは一升瓶の先が突き出ている。中に入っているのは泡盛が半分ほど。
隠れていた民家でユウゴーに良かれと思って胡椒の瓶を差し出したとき、
「じゃあ、戸部さんはこれ持っていってくださいよ」と、どこから見つけたのか件の一升瓶をくれたのだった。
(ったく、こんなもん何に使えって言うんだよ?まだ胡椒のほうが役に立つんじゃねーか!?)
アルコールなのだから消毒や気付けとしては使えるかもしれないが、護身になるとは全く思えない。

166 :虫の知らせ(2/2) ◆vWptZvc5L. :2005/04/16(土) 03:20:51 ID:oL+N7leT0
もしかしたらあれが今生の別れになるかもしれないのに、
互いに交換したものが胡椒と泡盛だなんてどこか間の抜けた話だ。
それでも別れ際までそんなふうに、真剣なのか茶化しているのかよくわからないやり取りをしているのが
自分達らしいんじゃないかと思った。そうでもしなければきっとあの場が湿っぽくなってしまっただろうし、
その寂しさにかられて、ユウゴーの決心を邪魔してしまうかもしれない。
今、自分が背に感じている瓶の重みが、ユウゴーの決意の重さそのもののように感じられた。
「これ、何かの役に立つのか?飲んで現実逃避とか?でも、俺あんまり酒強くないんだよなぁ」
そんなことをつぶやきながら、歩いていくうちに戸部ははっと背後を振り返る。
どこか遠くから、かすかに銃声のような音が聞こえた気がしたからだ。

(気のせいか?)
いや、むしろ気のせいであって欲しいと願う。もう曽我部のような犠牲は見たくない。
争いの中心部から離れようとしているはずのに、些細なことに敏感になってしまう。
「ユウゴー、大丈夫だよな…?」
妙な胸騒ぎを感じながらも、戸部は再び北へと向った。

167 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/16(土) 08:41:28 ID:bu+Lmwds0
新作キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

幸一、どうなっちゃうんだ…?

168 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/16(土) 09:34:19 ID:PmR8KuH10
幸一(つД`)

169 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/16(土) 19:10:47 ID:HJA7BhtlO
幸一…( ゚Д゚)

170 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/16(土) 22:32:05 ID:6gERODex0
待て、幸一はまだ死んじゃいない・・・多分(つД`)

171 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/17(日) 01:55:10 ID:EjBN6MRi0
死んでて欲しくはないけど・・

172 :花火 1:2005/04/17(日) 02:18:03 ID:BlEFChoC0
ひとつの中心へ向かっている。
爆音と焦げ臭い匂いの中に、突き進んでいる。

その点の集結を知るのは二人。雅英と西岡だ。
だが二人は互いにそのことを知らない。西岡の察しているのもただの気配だ。

今江の肩にリュックの紐が食い込んだ。ぎち、と濡れた荒い布同士がかみ合う音がする。
タンカを切って出てきたが、背後にもう気配が無いことに魂と膝ががくがくする。
西岡の存在感を思い知って、だからこそ生きて欲しいと思う気持ちと、こんなときなのに少し嫉妬すらした。

大塚のマシンガンは未だ泣く。正確には大塚のものではないマシンガンが未だ泣いている。
雨は上がったのにその遺品は、持ち主を恋しがるように表面にしっとりと雫をまとわりつかせて。
それを大塚は知っていて見ない振りをしている。その冷たさも知っている。

福浦の鼻先を掠めたその匂いは、少し吐き気を連れてきた。
遠いのにじわっと鼻に広がる。何か、異様なものがこげた匂いだ。異様なもの。食欲のわかない肉の匂い。
大塚の名を呼ぶ舌が固まったままだった。名前も呼べなかった。

西岡は来た道を駆け上がる。一度通れば地理くらい頭に叩き込める。
今江を追っているのかは自分でも解らない。むしろ今江が向かうその先に用がある。行かなければ。
彼より先に。誰より先に。

173 :花火 2  ◆prGJdss8WM :2005/04/17(日) 02:20:48 ID:BlEFChoC0
ゆっくりと深呼吸して、気配を殺した。そんなことしなくとも、二人に自分の姿が見えないことくらいはわかっていたが。
外れた民家か山仕事への出小屋か、うらぶれ薄汚れたその平屋の中からでは、まだ二人の声も聞こえない。
蹲るとモニターの点滅だけが手元を照らす。
それを拡大表示に切り替えてゆっくり待つ。窓の外へストレートで、いやフォークか、手榴弾を投げるその軌跡をイメージする。
二人に恨みなどは無いが、それでも立ち止まるわけにいかない。
今ここで迷えば、自分の存在価値が危うくなることを、雅英は本能でわかっていた。
それはこのゲームのキャラクターとしてというだけでなく、今まで手にかけた命の上に立つ自分という意味でもだ。
ここで迷って、そして転べば。沈めば。
いくつもの命が無駄になると思った。そうやって自分を正当化しているとも思ったが。
原井が言った「尊き意志」なんてこんなものだ。俺の理由なんてそんなものだ。

モニタに二つの点が、こちらに近づく。右手に手榴弾を固く握り締める。
ますます息を殺して、集中するために半眼になった。

駆け下りれば街だと、そんなこと見なくても解った。立ち上る白煙が、銃撃戦か爆撃戦の爪を物語る。
「大塚」
「うん」
思わず二人で眉をひそめた。どうしようと今更思う。突入してどうなるかと今更思う。
山岳の森から少し出た丘の上で、足はすくんだ。
「…和也」
低い声で大塚は言った。
「なるべくならお前は巻き込みたくなかったなあ」
「何がだよ」
「……色々」
決まり悪そうに、大塚がいつものように肩をすくめた。こんな戦いのときでないときに良く見た大塚の癖だ。
都合が悪くなると逃げて、肩をすくめる。借りたCDを割ったときも、手持ちが無いからとスポーツドリンクをねだるときも。
走馬灯のようにそんなことを思い出した。
「色々か」
福浦の口元がほころんだ。
「お前と一緒でよかったよ」
一歩前に出て大塚の肩を叩いた。ぽんと軽く。言って、覚悟は出来ていた

174 :花火 3  ◆prGJdss8WM :2005/04/17(日) 02:25:18 ID:BlEFChoC0
行こうと前のめりになるのと、脇の獣道が大揺れするのとはほぼ同時だった。
がっと大塚の腕が福浦の肩を突く。まるで庇うように伏せさせる。
「誰だッ」
自らもぐいっと瞬間にして身をそらせて、背後の林にダイブする。冷たい雫が首筋に改めてかかった。

目をあけると、点が増えていた。
「!?」
モニタの視界も絞っていたせいで、圏外から近づくその点に気付かなかったらしい。
背番号表示に切り替えて、雅英は舌打ちしながら、座り込んでいた膝を掻いた。
手榴弾でここから安全に爆撃というわけにはいかなくなったからだ。二人をやると、こいつまで巻き込んでしまう。
それは絶対にまずい。

「…っあ?…」
無防備にも呆然とその場に現われた今江に、大塚も福浦も一瞬声を失った。あまりにも無防備すぎた。
「…今江?」
「和也…下がれ」
瞬間で我に返り、小さく言った大塚は伏せながらマシンガンを抱えた。
「今江、見えるか。それ以上近づいたら打つ。お前がここにいる理由を言え」
「…え?…あ?」
「大塚だ」
すこし首を上げて、もちろんその前に銃口を差し出す。
草のさやさやいう音もまだ湿っていて、その葉一枚ずつの辺縁が薄いカミソリのようだった。それが頬に触れる。
「今江!お前がここにいる理由だ!!」
あまり馴染みがあるとは言えない名前をまた呼ぶ。
「今江…だろ。大丈夫だ」
「和也っ」
「今江、大丈夫…大丈夫だ。な、俺も、お前も…大丈夫だよな」
「立つな!!」
大塚の制止を振りきって福浦はぐっと顔を上げた。言っている言葉は自分にも向けていた。大丈夫だ、大丈夫だと。
その時感じていたものは理由とは言えない。ただのカンだ。第六感とでも言うべきか。
彼も戸惑っているように感じたのだ。もどかしくて、どうしていいかわからなくて、それでも根底にあるものは負の感情ではないと。
後に大塚は、それを似たもの同士のシンパシーだと言った。今江は笑ったようだった。

175 :花火 4  ◆prGJdss8WM :2005/04/17(日) 02:29:02 ID:BlEFChoC0
今江抜きで仕留められるか、ためらったのはどれくらいだったろうか。
普段の自分ならこんな不利な状況はさっさと見捨てて、もっと有利なところへ走っただろう。その切り替えの早さも武器だった。
しかしそれに気付かない程度には、雅英も少し思考が混乱していた。原井の言葉が意識の片隅から叫び続けていたのかもしれない。
だからここで仕留めたかった。ここで必ず仕留めたかった。
少なからずどころか、固執していた。二人の命を奪うことで、また前進する。しかももう一度この武器で、それにこだわっていた。

「福浦、さん…やったら、大丈夫や。俺、嫌や、こんなん…」
「うん、大丈夫だ。俺は何もしない。絶対こんなゲームには参加しない」
「ッスよね、うん、あ、すんません、俺混乱してて…」
「わかってる…俺もだよ。こんな状況なんだから」
「何とかしたい、何とか止めたいンすよっ」
「うん、うん…うん」
一歩、一歩、またこちらも無防備に、福浦が彼に近づいていくのをそれでも大塚は伏せたまま見つめる。
あくまで今江を安心させようとしているのか、福浦はきれいに両手を天にむけて、何も持っていないとアピールしている。
「俺…ッ」
大塚の視界で、完全に福浦の背と今江の姿が重なった。
日食のようだと思ったとき、ひゅううっと何かが空を切った。

野球をしているときとは全く違う、いや遠投のフォームに近い動きで、その手榴弾を空高く投げた。
殆ど窓枠だけになっている破れ窓から、見上げる丘の上辺りを狙ってねずみ色の空を目指させる。
誰かの真上に落下することも考えたが、確率3分の2、それに賭けた。
小林雅英の今まで積み重ねた実績は少なからず、その運にも左右されてきたから。
積み重ねた自分の運に賭けた。

「伏せろォォォォ!!」
言葉を理解する前に、福浦は振り返った。それが最後だった。
ばばぱららっぱらっ、何の音か理解する暇も無かった。
どっ、という圧力と熱気と、爆風が福浦の背を押す。熱い激しい手に突き飛ばされたように吹っ飛んだ。

それは遠くから見れば花火のようだった。
虚空で弾けた火薬の塊は、美しくきらきらと光りすらした。

176 : ◆prGJdss8WM :2005/04/17(日) 02:33:07 ID:BlEFChoC0
時間軸かなりずれてしまいましたが、動いていない人々をがんがんと
動かしていこうと思います…急ピッチで
本当に遅くなりすみません
投下の手順も間違えトリすらつけられてないものがありますが、
一連のものです…
120秒規制って本当に辛いですねorz

177 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/17(日) 09:20:42 ID:UTQ3jOh10
おぉ、なんか活気付いてきましたね。イイヨイイヨー

178 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/17(日) 09:22:44 ID:3A536UhzO
福浦…

179 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/17(日) 22:02:55 ID:SFwPEsbZ0
福浦……

180 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/17(日) 22:23:46 ID:GrF/6z88O
職人さん乙です。
堀はどーなるのか、2323達は無事なのか・・・続きが楽しみ
内と於保の続きも気になります。がんがって下さい

181 :新たな疑問(1/5) ◆UpgPqRu.6s :2005/04/18(月) 00:40:46 ID:sUS41Ddc0 ?
左肩に感じる熱は、相変わらず熱い。
小野晋吾は後一歩踏み出せば禁止エリアになるその場所で、随分長い間立ち尽くしていた。

ほんの1メートル先に、色褪せた看板がかかっている。
『畠山診療所』
全体がまんべんなく掠れたその看板は、そう読めた。
「…くしょっ」
足元に転がっていた石をその看板に向かって蹴り上げ、改めて肩に感じる熱が高い事に気付く。
「悪い、こんなとこ突っ立ってて。ちょっと休もう」
橋本を半ば引き摺るようにして、禁止エリアのこちら側、道路を挟んだ向かいの家屋の軒下にその体を座らせた。
玄関と思しき引き戸に手をかけてみたが、動かなかった。
軒を支えている柱に背を預けて、崩れるように橋本を見下ろし、晋吾は小さく溜め息をつく。
小刻みに呼吸する度に上下する肩が痛々しい。
目の前に今欲しい物があるのに、何も出来ない自分が腹立たしい。
橋本の隣に座り込んで、晋吾はその古ぼけた建物を睨むように見つめ続けていた。
「……?」
───その建物の脇の藪が、動いたような気がした。
風はない。という事は誰かいるのか。誰かいるとしたら誰だ。
そこは禁止エリアの筈だ。───という事は運営陣の誰かか?
慌てて立ち上がり、橋本を立たせる。隠れなければ。
「…晋吾さん?」
熱に浮かされた口調で、橋本は首を傾げた。
「…誰か禁止エリアにいる。隠れるぞ」
できるだけ小さな声で囁き、少しずつ歩を進める。
ガサガサッと、今度は明らかに足音が聞こえた。
橋本にもそれは聞こえたらしく、全身が強張るのが感じられた。
「…急ごう」
とにかくこの家屋の向こう側まで。
───次の瞬間、晋吾は凍りついた。
カチャ、と何かをセットするような音。


182 :新たな疑問(2/5) ◆UpgPqRu.6s :2005/04/18(月) 00:41:30 ID:sUS41Ddc0 ?
間髪を入れずに連続した銃声が耳を劈く。そして何か悲鳴のような叫び声。
思わず地面に伏せた───が、こちらに向かって銃弾は飛んでこなかった。
恐る恐る顔を上げる。
───無残に粉々になったあの看板と、壁の残骸が先ず目に入った。
その次に目に入ったのは白いアップシューズだ。
わなわなと震えているように見えた。
ガチャ、と音を立てて力なくマシンガンが膝の辺りに下りてくるのが見えた。
ようやく晋吾は体を起こした。
こちらに背を向けているその人物の全身が見えた。
濃い紺色のウィンドブレイカー。
しかしその下は自分達が着ているストライプのユニフォームのように見える。
その男は暫く放心したように立ち竦んでいた。
何か小さな呟きが聞こえる。
───やっぱり隠れた方がいい、そう思って橋本の体をもう一度抱き起こしたのと同時に、その男はこちらを振り返った。
───しまった。
もう遅かった。
橋本を庇うように彼の前に立ち、スパナを握り締めた。

「……晋吾さん?」

濃い紺色が、真夜中の闇のようだ、とそう思った時、思いがけない言葉が少し上から降ってきた。
ウィンドブレイカーの男は、目深に被っていたそのフードを脱いで、マシンガンを地面に投げ捨てた。
両手を上に挙げて、男は一歩、また一歩とこちらに向かって歩いてきた。

「……宏、…之…?」

まさか。…まさか。



183 :新たな疑問(3/5) ◆UpgPqRu.6s :2005/04/18(月) 00:41:50 ID:sUS41Ddc0 ?
『宏之に撃たれました』
凍りついた表情のサブローが発した言葉。
『…小林宏41番、…』
今朝の放送で能天気な声で読み上げられた名前。

───頭の中に矢継ぎ早に様々な疑問が浮かび上がる。

何故。何故生きている。何故だ?


何も言葉を発せられないままの晋吾の目の前に立った小林宏之は、地面に力なく座り込んでいる橋本に気付く。
橋本も明らかに混乱している顔だが、それ以上に顔色の悪さが目に付いた。
「将さん?…大丈夫ですか?」
橋本の前に膝をついて、額に手を当てる。
「ひどい熱じゃないですか!」
右肩にかけていたリュックを下ろし、宏之は中を探った。
紺色の───箱の───薬。
もう箱とは言えないほどひしゃげたそれを見つけ出し、中の錠剤を取り出す。
「…宏之、…」
橋本が掠れた声で何か言おうとし、その潰れて赤茶けた箱を目にして口を噤んだ。
「解熱剤ですよ、」
更にペットボトルを取り出して錠剤と共に橋本に渡し、宏之はいまだ言葉を発せられずにいる晋吾に声をかけた。
「晋吾さん、俺、この中入って何か着るもの探してきます」
「…あ、ああ」
橋本が薬を飲んだのを見届けて、宏之は引き戸に手をかけた。
鍵がかかっているのを確認し、足元に転がっていた石で鍵のある辺りを叩く。
何度か叩くとガラスが割れた。
鍵を開けて、引き戸を引く。埃っぽい、湿った空気が鼻を突いた。
「…宏之」
同じ臭いを感じ取ったらしい、晋吾がようやく身動きして、宏之の肩に手をかけた。


184 :新たな疑問(4/5) ◆UpgPqRu.6s :2005/04/18(月) 00:42:09 ID:sUS41Ddc0 ?
「…あっち、診療所らしいんだ。あっちの方が将にはいいかも」
粉々になった看板の方を指差し、晋吾はそう言った。
「…禁止エリアに入れるんだよな?」
晋吾の掠れた声の質問に宏之は頷き、その建物の方に駆け出した。
「すぐ戻ってきますから」

───少し前にも同じことを言った。
その時は───

大丈夫だ、今度は一人で残していく訳じゃない。
首を何度か振り、湧き上がった疑念を振り払う。

診療所のドアには鍵はかかっていなかった。
宏之はドアを大きく開け放ち、消毒液の臭いが染み付いた部屋に足を踏み入れた。

診療所の中に消えていった宏之の背中を見送りながら、晋吾は橋本の隣に胡座をかき、肩に手を回した。
橋本の足元に、ひしゃげた赤褐色の小さな箱が落ちている。
拾い上げて、まじまじと見つめる。元々はよく見る鎮痛解熱剤の箱だったらしい。
今それは、元の色が判別できない程くすんだ赤で汚れていた。
どう見ても誰かの血だ。しかも割と新しい感じがした。

───一体、宏之の身の上に何があったと言うんだろう。
宏之に撃たれたと無表情で言ったサブロー。
今朝6時の放送で宏之の死を告げた、山本功児。
禁止エリアから現れた宏之。───しかもいきなり看板に向けてマシンガンを乱射して。
そしてこの箱だ。誰かの血で染められた、鎮痛解熱剤の箱。

あの看板を破壊し終わった宏之は尋常ではなかった。それは明らかだった。
だからこそ自分は隠れようとしたのだし、いつもの宏之ではありえないと思えた。


185 :新たな疑問(5/5) ◆UpgPqRu.6s :2005/04/18(月) 00:42:31 ID:sUS41Ddc0 ?
いや、こんな状況で、しかも「死んだ」と放送された張本人なのだから、どこかおかしくなっても仕方がない、とも思う。
それでも、と晋吾は考えた。そうだとすると、その後の宏之の行動が晋吾には理解できなかった。
それは余りにもいつも通りの宏之で。

考えれば考える程、思考は袋小路に入り込み、晋吾は何度か首を振って大きな息を吐いた。
微かに足音が前方から聞こえてきて、毛布を何枚か、そして何か大きな袋を持った宏之の姿が診療所の中に見えた。

同時に、宏之が破壊した看板に書いてあった全ての文字を、唐突に晋吾は思い出した。

『畠山診療所 62-1』

「…将さん」
何か意識が遠のいたような感覚を覚えた直後、宏之はもう自分達の前に立っていた。
途中でさっき降ろしたマシンガンも拾ってきたらしい。
ベージュ色の毛布を2枚、橋本にかけている宏之は、実際いつも通りの宏之だった。


186 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/18(月) 12:13:49 ID:lbWdb/jfO
会えた…

187 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/19(火) 00:28:27 ID:ZxEoobek0
新作たくさんキター

188 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/19(火) 01:14:36 ID:sj2Wqtw80
職人さん達超GJ!
これからも新作期待アゲ

189 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/21(木) 02:54:15 ID:LInjnvXg0
復旧キタ?

190 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/21(木) 08:09:37 ID:gs0NSolkO
復旧記念パピルス

191 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/21(木) 09:11:07 ID:K1frgWux0
本スレどこ?

192 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/21(木) 22:51:45 ID:FqBeLKCo0
あげとくわ

193 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/22(金) 00:52:20 ID:HkW9ZE470
復旧に今気付いた記念

194 :代打名無し@実況は実況板で :2005/04/22(金) 00:54:38 ID:YVANmj3T0
ドラバト新スレ立ちました。

中日ドラゴンズバトルロワイアル第十一章
http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1114096225/

即死回避ご協力願います。

195 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/22(金) 22:52:56 ID:FmQ1khgW0
保守芝

196 :矛先(1/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/23(土) 01:45:31 ID:ywtCEiw60
 ナイフの先はさっきまで見えなかった。
今、堀幸一が倒れると共に左手に握られたナイフが現われた。
その人のお腹のところ、少しダブついたユニフォームの隙間から。
ナイフが赤く滴るのは何故だろう?
ユニフォームが赤く湿るのは、なぜだろう……血だ。
血だ。
その血を生み出したのは、自分のナイフだ。
自分が握っていたナイフは、堀を刺したのだ。
刺したのはナイフを握っていた自分の左手だ。俺だ。
そこまでは分かっている。
(なんで俺の左手は、堀さんを刺してるんだ?)

「なんで…」
彼の頭を撫でた堀の右手が、ゆっくりと離れていく。
それを呆然と立ち尽くしたままで、浅間敬太は見ている。
視線を一度外す。
ナイフが赤い。それを持っているのは自分の左手だ。
この左手は、自分のものだ。堀を刺したのは誰か。
「浅間!どいてくれ!」
初芝清が駆け寄り、崩れ落ちる堀の体を地上スレスレで抱き止める。
「堀、しっかりしろ!」
堀は答えない。
うつろに目を細めて、何事かつぶやいたような気もした。
少し痛そうな顔をした。そしてフッと眠りに落ちた。

「まだだ!死ぬのは早いぞ!」
初芝は堀を地面に寝かせると、血のにじむ腹の辺りのユニフォームを裂く。
「成瀬君!僕のバッグを!」
「はい!」
成瀬が持ってきたバッグを受け取ると、逆さにして中身を一気に出す。
タオルや食料に混ざって、小箱が幾つか落ちてきた

197 :矛先(2/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/23(土) 01:49:11 ID:ywtCEiw60
一つの小箱を取り出して開ける。
中に針やはさみが入っているのが成瀬に見えた。
「なにをするんですか?」
「応急の手術道具。診療所にあったのを持ってきたんだ。
 傷は浅くないが…縫い合わせてみるよ」
初芝の眼差しが光を帯びた。
「ぼくわ、なにかできますか!?」
「タオルを取って。堀の傷口を抑えていてくれ」
言われるとおりに成瀬が堀の傷口にタオルを当てる。
赤いインクを塗りたくったような腹の上に、横と斜めに15cmの裂け目が血を吐いていた。
タオルを当てて一瞬離すが、裂けた傷口の奥の色は濃くてよく見えない。
すぐに血が滲み出してきて、慌ててまたタオルを当てる。
「ほりさん…」
タオルが真っ赤に染まる。成瀬が何度か見た色。
自分の血、そして、自分でない人の血。
「ほりさん…しなないで…」
成瀬がつぶやいた。

「よし、じゃぁタオルをどけて」
ゴム手袋をはめた初芝が、消毒液を勢いよく傷口に吹きかける。
「麻酔は無いが、我慢しろよ……いや、気絶してるのか。
 成瀬君。堀にもっと話しかけてやってくれ」
そう言って右手に針を持つ。縫合用の、半円に曲がった針だ。
スッと、落ち着いた様子で初芝は堀の傷口を縫い合わせ始めた。

 その横で浅間はまだ立ち尽くしていた。
「浅間…おい、浅間」
すぐそばにいた里崎が肩に手を置く。
浅間は感覚が抜け落ちたように、何の反応も示さない。
目線だけが、瞬きすら忘れたように堀を見ているように見えた。
(俺が…刺した? なんで俺が堀さんを刺すんだ?
 俺は、違う。俺は、だた、そうあいつが…)

198 :矛先(3/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/23(土) 01:51:20 ID:ywtCEiw60
 すぐそこに、背中を震わせながら堀に何事か話し続ける彼がいる。
懇願するような表情で、堀の顔を覗き込む。
(そうだ、こいつがいたから、俺は身を守るためにナイフを…
 それなのに、なんでお前は無事なんだ、成瀬?
 堀さんじゃなくて、俺がナイフを向けたのはお前だったのに…)
「成瀬」
「え?」
「お前のせいだ。俺は堀さんを刺すつもりなんかなかったのに。
 俺が堀さんを刺すわけない。お前が、お前が」
浅間が一歩、成瀬の方向へ歩き出す。
「お前が、お前が、お前のせいで、お前が俺を殺そうとしたから、
 お前が殺すって笑うから、だから」
また一歩踏み出す浅間のその手は、再びナイフを取り出し握りしめていた。
その肩を強い力で掴んだのは里崎だ。
「浅間!」
里崎が浅間の手をはたくと、ナイフは回転しながら地面に転がる。
浅間は首を動かさず、目線だけを横に向ける。
里崎が真っすぐににらみ返す。
「何で止めるんだ!こいつはみんなを殺すんだ!」
「違う!成瀬は堀さんの治療を手伝ってるんだ!
 誰も殺そうとなんてしていない!」
「あんたは知らないんだ!こいつは今朝、俺を殺そうとしたんだよ!」
肩を掴んだ手を振り払うと、浅間が成瀬を指差した。
成瀬は顔を伏せ、視線を合わせようとしない。

「浅間、俺にはとても成瀬がそんなやつには見えないよ。
 お前は本当にそんな成瀬を見たのか?」
「…いいんです、さとざきさん。
 ほんとうのことです。
 いえ、あさまさんもしらない。ひどいことを、ぼくわしました…」
成瀬が地面を見つめながら、背中越しに言った。

199 :矛先(4/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/23(土) 01:55:47 ID:ywtCEiw60
「なんだって…?」
「ほら、成瀬はそういう奴なんですよ!こいつは、こいつは人殺しだよ!
 誰か殺したんだろう!きっと!そうなんだろ!?」
「やめろ、浅間!」
浅間が指を刺して叫ぶのを、必死で里崎は制す。
しかし成瀬は一言も返そうとしなかった。
浅間は更に罵りの言葉を浴びせる。それでも成瀬はうつむくばかりだ。
すすり泣くような声が成瀬の背中から漏れた。その時、頭を優しくポンと叩かれる。
「あ…」
「応急処置は終わった。助かるかは、まだ分からないけど」
額に汗を浮かべた初芝清が、そこに立っていた。

 初芝の言葉に、浅間は叫ぶのをやめた。
「堀さんは、堀さんはどうなんですか!?」
「傷口は縫い合わせた。だが、出血がひどい。
 止血も不十分にしかできないし、このままだと厳しいよ…」
「そんな…」
浅間の膝が途端に震えだした。
不意に自分の左手を見る。赤く染まっている。
慌ててズボンで拭くが、それが手から落ちるはずも無かった。
「助ける方法はありますか?」
里崎が一歩踏み出す。
「今できることは、出血した血を補充してやることだ。
 つまり、輸血が必要だ。
 道具は診療所から持ってきたものがある。僕もやり方は知っている」
「じゃぁ、早く!早く輸血してください!」
浅間が初芝に詰め寄る。初芝はしかし、次の言葉をためらった。
「…堀さんの血液型は?」
里崎が聞く。
「知らないんだ。今まで聞く必要なんてなかったからな…
 本人は眠ったままだし、それに」
初芝が外に広げたバッグの中身から箱を拾い上げた。箱の隅から液体が漏れている。

200 :矛先(5/5) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/23(土) 01:59:11 ID:ywtCEiw60
「血液型を調べるキットも持ってきたんだが。
 さっき、強くぶつけてしまった拍子に使えなくなってしまった。
 浅間君が成瀬君に襲いかかったときに、ちょっとね…」
ほんの数分前の里崎の記憶がよみがえる。
浅間の手をバッグで払いのけた時にした、なにか割れたような音を思い出した。
「どうすれば…いいんだ…」
里崎が行き詰って顔を曇らす。初芝が続ける。
「方法は、ある。最悪、O型なら堀が何型でも輸血して問題はない。
 O型の人間、いるか?」

「俺は、A型です」と里崎。
「俺もです」と浅間。
「僕は、AB型なんだよね」初芝が言う。
「おー!」
成瀬が声を上げる。
一同の視線が成瀬に集まる。
「ぼく、はつしばさんとおなじだ!」
初芝がため息をついた。

「ふざけんな成瀬!堀さんが死にそうなんだぞ!
 堀さんが…死……」
浅間が成瀬に掴みかかろうとする。里崎がすぐに割って入る。
「ふざけてません…うう…」
「とにかく、堀をもう少し清潔な場所へ運んで、協力してくれるO型の人間を探すんだ。
 今できるとしたら、それしかない」
初芝の言葉に成瀬と里崎がうなずく。浅間も成瀬をチラチラ睨みながら、じっと聞いていた。
木の枝とユニフォームで即席の担架を作ると、堀を載せ、移動し始めた。

担架を持つ里崎と成瀬、堀の様子を診る初芝、その後をついていく浅間。
浅間は震えていた。左手をずっとポケットにしまって。
「堀さんが……死んだら……」
頭をブルブルと振り、浅間は頼りない足取りで進んでいった。

201 : ◆QkRJTXcpFI :2005/04/23(土) 02:02:07 ID:ywtCEiw60
応急処置ネタで変なとこあったら言ってください。

202 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 09:23:17 ID:RDzRtVkf0
初様スゲー!!
O型の人って誰がいるんだろう、と思って調べたら
半分くらいヤバイ人間が混じってますね…

203 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 12:15:37 ID:nnSxVkhJ0
スゲースゲー初芝すげぇ〜Σ(゚Д゚ノノ

204 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 15:20:03 ID:Jn1b8rvjO
ひそやかに成瀬ワロスw

205 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 21:21:23 ID:YsR/wT/DO
そこはかとなく保守のかほり

206 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/23(土) 21:32:09 ID:IjMWiDQx0
虎バト新スレ移行です
即死回避にご協力願います

阪神タイガースバトルロワイアル第五章
ttp://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1114253667/l50

207 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/25(月) 00:57:11 ID:yaNgKErd0
保守

208 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/25(月) 20:09:44 ID:k/pIe+WdO
ほさ

209 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/26(火) 01:01:56 ID:gUPZVYQD0
ho...ほsy?

210 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/26(火) 15:48:56 ID:Kcp/VRd90
hosyu

211 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/27(水) 00:06:18 ID:LQ6AvwT70
ほづ

212 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/27(水) 17:02:49 ID:vYOnk16S0
ほせ

213 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/27(水) 20:45:40 ID:RQtrZCBy0
パーラ


214 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/27(水) 21:48:19 ID:WOLhKURWO
そっちかよw

215 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/28(木) 12:38:38 ID:BMjq3qV30
ホセ・オーティズ

216 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/28(木) 12:41:10 ID:BMjq3qV30
そしてホセ・マラべ


217 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/28(木) 19:27:44 ID:43ESp1n0O
増える難です

218 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/28(木) 20:29:25 ID:6nxs7/Io0
ごめん、スレタイ
「千葉ヤリーマンズバトルロリリアル」
に見えた

219 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/28(木) 21:40:36 ID:RTtuZZmx0
>>218
ロリリアルだとひとりしか参加できない気がする

220 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/28(木) 21:56:07 ID:43ESp1n0O
(ёдё)<呼んだぁ?

221 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/29(金) 00:01:03 ID:h46DW2zR0
よんでないw

222 :止まれ止らず(1/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/29(金) 10:58:43 ID:OJltSYmc0
 里崎智也が先頭を切って歩いていく。
さっき歩いた道だ。そのときは1人、この進む先を見通すために歩いていたのだ。
道と言うほど歩きやすさもない、草のぼうぼうと茂る獣道だ。
両手に木の枝を掴んで、揺らさぬよう振動を与えぬよう持ち上げながら歩く。
脚と腕を別々に動かすことを意識する。
 少し左手に重みを感じた。後ろで小さくうめく声がした。
「大丈夫か?成瀬?」
「う…だいじょぶです」
左腕に包帯を巻いた成瀬善久が答えた。
即席の担架の持ち手になっているのは、曲がりくねった長く太い木の枝だ。
成瀬が左手を握り直し、バランスを整える。
「腕に良くないだろう。僕が代わるよ」
「いいんです、これぐらいへいちゃらです」
担架に載せられた堀の横について歩く初芝清の申し出にも成瀬は首を振った。
堀はずっと弱々しく、しかし速いリズムで呼吸を繰り返している。
何度か初芝のした呼びかけには全く応える様子はなかった。

 その一行の後ろ、数歩分を置いて浅間敬太がついていった。
下を向きながら何やら考え事をしているようで、ときに頭を振る。
前を行く彼らに踏み倒されて起き上がりかけた草。再び踏み倒して、歩く間の作業とする。
前は向けなかった。左手はずっとポケットの中に突っ込んでいた。
 里崎がチラリと後ろを振り返った。浅間は下を向いている。
あとで彼の笑顔を取り戻してやらなければと思った。
ただ、その希望につなげられるような筋道は見通せていなかった。

「そろそろです」
里崎が言う。一行の前の生い茂った木々が、獣道に裂かれるように両側に分かれている。
木々の間を抜けると、左右に空間が広がった。
2mほどはある車の通れそうな道が左右に続いている。
土のむき出しになったわだちを残して、短い草が昼までの雨の雫に潤っていた。
「さっき、ここまで来て戻ってきたんです。
 方向としては、スタジアムに行くために左へ進むつもりだったんですが」

223 :止まれ止らず(2/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/29(金) 11:01:38 ID:OJltSYmc0
「小さくても建物があればいい。左で問題ないだろう」
初芝の言葉に従い両側を林に囲まれた山道を進む。ほどなく一軒の家が見えた。
山の中に佇むその一軒家は、平屋の日本家屋といった風情の簡素な建物だった。
縁側まで行き、堀をそこに下ろす。
「つい最近まで誰か住んでいた感じだね」
柱を触りながら初芝が言う。
「探したら何か使えるものはありますかね?」
里崎が肩をぐるぐると回してほぐす。
「うん、食料や水。それに堀のためにタオルと毛布が欲しいかな」
「あ、じゃあ、さがしてきます!」
成瀬が一目散に家の中へ飛び込んでいった。
その様子を見届けて、里崎と初芝が一息つく。

 さっきから黙って、突っ立ったままそれを見ていた浅間の眉が寄った。
「早く、行きませんか?」
「え?」
いきなりの言葉に思わず間抜けな調子で里崎が返す。
「輸血ですよ!O型の人、探しに行くんでしょう!」
声を荒くして、右手を大きく後方に振った。
初芝が縁側に腰を下ろしたまま、手をゆっくり上げた。
「まぁ待て、少し体勢を整えないと。
 誰がどう探しに行くかも決めておきたいし」
「モタモタやる必要なんかないですよ!
 輸血のやり方なんか初芝さん以外知らないだろうし、残りは探しに行けばいいんだ!」
「確かに俺は知らないけどさ、でも探しに行くって言っても…」
そう言って里崎は腕を組み、何か考えている様子だった。
待ちきれないといった風情でかかとを二三度地面に叩く浅間。
「なんですか!?」
「…単独で行動するのは危険だと思うんだ。
 せめて2人以上、いや、初芝さんを抜いたら3人になるのか。
 3人で一緒に行った方がいい」


224 :止まれ止らず(3/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/29(金) 11:04:17 ID:OJltSYmc0
「はあ!?
 冗談じゃない!なんで成瀬なんかと!
 3人で分かれたほうが効率だっていいでしょうっ!!」
「いや、浅間、だから…」
「もういい!俺は1人で探しに行く。
 あんたらは堀さんがどうなってもいいんだろ!」
言い放って浅間が身を翻す。
すぐさま駆け出そうとしたところを、里崎が立ち上がって手を伸ばした。
「おい、浅間!待て!」
パシとつかんだのは浅間の左腕だった。
 引っ張られた形でポケットに入れっぱなしの左手が飛び出し、2人の目の前に現われる。
赤黒い血が手のしわの間で乾いて固まり粉を吹いていた。しもやけでもないのに、真っ赤なその手。
その手を浅間はハッとしたように見た。
またたく間に顔をひきつらせ、里崎の向こうで眠る堀の姿に視線をやる。
「放せっ!!」
里崎の手を力任せに払いのけた。もがくように腕を振り回して。
そして今度こそ、勢いよく駆け出した。
「浅間、待て!止まれ!」
すぐ後を里崎も駆け出した。
チラッと後ろの初芝を見ると、初芝が行けと手で合図をしていた。
再び前を見て浅間の背中を追う。

「あれ?」
「あ、成瀬君か。丁度よかった。君もみんなと一緒にO型の人間を探してくれ」
障子の隙間からひょっこりと顔を出した成瀬の眼に、必死で駆ける2人の姿が映った。
「あー!おいていかれた!」
両手に抱えた袋やタオルをその場に投げ出し、成瀬が縁側から飛び出した。
多少の差をものともせず、少しずつ里崎の背中に迫る。
「ほーら、若いもんが3人で追いかけっこしてるぞ。
 なぁ、堀よ、ん?」
返事はなかった。静寂野中、堀の小刻みな息遣いだけが聞こえる。
「…頼むぞ…みんな」

225 :止まれ止らず(4/4) ◆QkRJTXcpFI :2005/04/29(金) 11:07:45 ID:OJltSYmc0
「浅間!止まれ!」
里崎が追いかけながら叫ぶ。
必死で脚を動かすも、浅間とは少しずつ差が開いていく。
「まずい…走るのは、苦手だ…」
あっという間に脚の回転が鈍る。里崎が自分の体型を恨み始めたその瞬間、横を何かがすり抜ける。
「成瀬!」
「ぴっちゃーは、はしりこみとだっしゅです!」
大きなストライドで浅間との差を詰める。
「成瀬、助かる…今の俺にはこれしかできないが…
 浅間ー!止まれーー!
 …止まんないな」

「…止まらないな」
初芝が3枚目のタオルを堀の腹に添えた。
一枚は肌にベッタリと付いた血のりをふき取り、もう一枚は堀の傷口からあっという間に血を吸い出した。
更に堀の体に毛布をかぶせる。
「堀よ」
堀は相変らず、苦しそうな息遣いで眠っていた。
そんな堀の傍らで初芝は、道の向こうの林から空へと視線を移した。
「傷は浅くないぞ。まだ血が止まらない。
 だけど僕はお前が生きるのを信じてる。
 お前はしぶといやつだからな。いまだに僕と現役やってるんだから」
雲間に青空が見えていたが、風に流された雲がそれを覆い隠した。
初芝が再び傍らの堀に視線をやる。
「起きろって、早く…」

226 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/29(金) 11:10:42 ID:8xexTYmgO
新作キタワァ(σ´∀`)σ!!!!!

成瀬がかわいいです…w

227 : ◆QkRJTXcpFI :2005/04/29(金) 11:11:28 ID:OJltSYmc0
実は引越すことになりましてネットに一時的につなげなくなります。
二週間か三週間か、なるべく早く再開するつもりですが現状なんともいえません。

何か別の所から書き込めないかとも考えていますが…
一応書き途中の話は区切りをつけてるつもりなので、続き書く方いたらどんどんドゾー

228 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/30(土) 01:33:32 ID:oFRtuW500
保守

229 :逆方向に 1  ◆prGJdss8WM :2005/04/30(土) 04:25:24 ID:Z4kN+nXu0
意識が戻るまで、数秒間の記憶はない。
覚えているのは途切れるまでの、その前の一瞬だ。
何か叫んだのは大塚の声だったか。それから福浦が身ごとこちらに突っ込んで来て、今江はあお向けに叩きつけられた。
その時視界はぱっと真っ白だった。多分。
耳をつんざくような、それでいて重い衝撃でしこたま頭を張りとばされたようだ。ぐわんぐわんと脳が鳴る。
「…ッ」
まぶたがひりひりする。体が重い。

「…大、丈夫か、…」
はっとして身をおこしかけたとき、腹の上あたりで声がした。
「ふっ…くうら、さんっ…!?」
「大丈夫か、今江、は…」
「!…大丈夫ですっ、福浦さっ…」
未だ周囲はもうもうと白煙が立ち込める。
かすれる声のまま顔をあげようともしない福浦の下から這い出して、体を揺さ振ろうとした今江は、その背を見て息を呑んだ。
背負っていたリュックがなければきっと、全て焼け爛れていただろう。
腰のあたりに赤黒くなった皮膚が見えた。思わず名を呼ぶと、彼はやっと顔を上げた。
顔もすすけているのか、汚れているのかしている。目を細めて苦しい息の下、苦笑いした。
「…すまん、守りきれてないな。頼んない、先輩だな、俺」
「福浦さん、いいから!」
どうしよう、どうしたらいいんだと今江の頭はまた真っ白になる。
誰かが攻撃してきた。今までこんなに本気で、命を狙われたことはない。相手が誰かも、どこにいるかもわからない。
怖い。本能的に足と身はすくんで固くなった。
目の前の福浦が立ち上がろうとして、痛みに息を詰まらせる。見れば左肩の辺りもひどい火傷だ。

230 :逆方向に 2  ◆prGJdss8WM :2005/04/30(土) 04:31:30 ID:Z4kN+nXu0
「逃げろ、今江」
思わず肩を貸しかけた彼を突き飛ばすようにして福浦は言う。
「逃げろ。お前だけでも」
「…えっ」
「巻き込まれるぞ!」
ぼろぼろになったリュックをたたき降ろして、しゃがんだ福浦はひきつる指でゆっくりそのボウガンを持ち上げる。
今江を背に庇うようにする。その左肩の上下を見れば、痛みのひどさも想像がつく。
指が強張っているのもきっと、ところどころ焼けたのだろう。
「福浦さんもっ」
「…俺は、止めるから。食い止めるから」
「そんな」
「逃げろ。頼むから…逃げてくれ。今なら隠れられるから。頼むから」
ぱぱぱらあっ、その時またあの音がした。福浦が白煙の向こうにはっと顔を上げる。
「…明ああっ!?」

自分が小さい存在だと思った。何も出来ないと叩きのめされた。
今江は泣きたかった。直行に大見得を切ったときのあの度胸すら消えかけていた。
俺はなんて。
何も出来ないくせに。
目の前で俺のためにまた、誰かがいのちを張っている。そんな価値があるなんて、そんなわけない俺のために。
どうしてそんなに皆強くいられるんだろうと、場違いに不思議にすら思った。

がさっと背後に音が聞こえたとき、今江の心臓は最後の一音を刻むようだった。
回り込まれたと理解するより先に、本能が命を見切った。
「…福浦さん!!」
そこからはスローモーションだ。

231 :逆方向に 3  ◆prGJdss8WM :2005/04/30(土) 04:34:29 ID:Z4kN+nXu0
福浦が目を見開いて振り向く、それを見て今江はぎゅうっと目をつむる。親鳥が雛を守るように手を広げる。
その音の方向と福浦の間に仁王立ちになる。無防備な胴を晒した。
茂みから来るのはナイフだろうか、銃弾だろうか、せめてあんま痛くないとええなとちょっと思った。
無駄死にを全否定していたあいつのことを思い出す。あいつやったらこんな時でもきっと、逆転できる手を持ってるんやろな。
西岡。

火薬の破裂したあとの音と匂いと煙に慣れるまで、大塚の計算ではたっぷり10秒はかかったはずだ。
熱気も去り、敵が距離を詰めてくるには充分すぎるほど充分な時間だ。
大きめの木を盾に、蹲ってやりすごせたということは、破裂した地点はきっと自分より福浦の方が近かった。
今江もいた。あっちは大丈夫か。
「和也、生きてるか!?」
返事しろと言いながら大声は出せない。白煙のどこから誰が狙っているかわからない。
くそっ、思って半分自棄もあって、大塚はマシンガンを空に撃つ。
狙うんだったらこっちに来いと何度も撃つ。
撃ち落そうとした、あのときの狙いはどこまで正確だったのだろうと思いながら。

「…はい?」
たっぷりしてから、まるでボケたような声がする。今江は空耳だと思っていた。
「何です、のん?」
痛みは無かったが、それも全部終わったからだと思っていた今江の耳によりによって、聞きなれた関西弁が引っかかる。
恐る恐る目を開ける。また見慣れた顔が訝しげにこちらを見ていた。
「…今江さん、今何が言いたかったん?」
「に…しおかあ!?」
「さっきも呼んだやんけ」
「本もんか!?」
「こんなええ男そうそういてたまるかい」
それよりしゃがめと引っ張り降ろされる。その強引さも間違いなく西岡だ。
「福浦…さん?無事ですか?」
「西…っ?」
「大丈夫、俺は敵やないです」

232 :逆方向に 4  ◆prGJdss8WM :2005/04/30(土) 04:37:34 ID:Z4kN+nXu0
あー火傷したはるね、痛いですか?西岡はさくさく福浦へ近寄る。
「痛い…な、やっぱり」
「よかった。痛いならまだマシでしょ。マジでヤバイ火傷やったら、感覚なくなりますからね」
まだ完全には不信が解けていない様子の福浦にも、西岡は淡々と言う。言いながら肩や背を覗き込む。

リュックを下ろせば同じチームの人間とも思えない。深いカーキのシャツを着て、西岡はそれを言い訳もしない。
未だ呆然としている今江に、その中から何かを探り出してにゅっと差し出す。
「…?」
「ボケてんと!はよ逃げてや!これ持って!!」
包帯にして!と、先ほど民家から奪ってきた残りだろう、タオルだかシャツだかを押し付けてくる。
「とにかく水で洗って手当てや!」
「…あ」
「あんたに言いたいことは山ほどある。けど文句は全部ツケとくから、覚悟しといてください。今は逃げ!」
「お前はっ!?」
「俺は俺にしか、出来んことやるだけや」

言って西岡はまた身をかがませる。
「行って」
「西岡…待て、大塚も一緒で」
「知ってます。ついでに言うとくと、相手は小林さんです。雅英さん」
「西岡っ…!?」
「詳しいことは今江さんから聞いてください。今江さん、南以外に逃げてや!あんた方向音痴やねんからっ」
かしょんと、飛んできたグリップの太い銃身を、今江は思わず抱きとめるようにしてしまった。
自分の銃だった。
「アホ。丸腰で、何で北なんか来とんねん。G5やったらもっと南やボケっ!!」

また、ぱぱぱら、ぱぱぱっとマシンガンの音だ。
先ほどより少し遠ざかったように聞こえた。

233 :逆方向に 5  ◆prGJdss8WM :2005/04/30(土) 04:40:28 ID:Z4kN+nXu0
「…はよ行け!!」
はっと顔を上げてそれから、押し殺した西岡の声が殺気を帯びる。
身をかがめて走ってきたのだろう、上半身のそのシャツにも、雨だれの染みはいくつもついていた。
「に、しおか…」
「アホ。ボケ。何も出来んのに、何もわからんのに、一人で行きやってからに!!」
「…そう、やな」
「皆助けるとか、大きなクチ叩いて!」
「……」
「あんたは、目の前のひとり、助けといたらええんじゃ!!」
ひゅっとまた何かが飛んでくる。ペットボトルと、ゴムひもで結わえた地図。
「あんたは、目の前のひとりだけでええ!!」

西岡の薄い背が気のせいかぼんやり遠い。福浦の呼ぶ声にも彼は首を振る。
一緒に来いという声にも振り向かない。小さなあのピストルを左手に構えて、右手にはモニタを持っている。
そういえば両利きみたいな器用な奴だった。
「西岡、置いていけるかよ!」
「足手まといやて言うてるんです。失礼ながら」
「う…」
「今江さん、頼むよ。死なせんって言うたよな」
約束したよな、ちらりとそのきつい目がこちらを見た。
もう白煙はおさまりきって、森のあちこちがしなびてなびいて、地もえぐれているのが見えた。
緊迫した静けさもまだあった。唇を舐めた。
銃をばちんとベルトに挟んで、今江はぐいと福浦の腕を引く。

「行きましょう」
「今江…っ」
「行きましょう。大塚さんも大丈夫です」
きっと、と口の中で言ってもう片方の手で、福浦の手からボウガンを奪う。
これも、と西岡から最後にリュックそのものが飛んできた。それも今江のものだ。
「西岡…」
ぱらぱらとまた遠ざかるマシンガンの音。

234 :逆方向に 6  ◆prGJdss8WM :2005/04/30(土) 04:42:31 ID:Z4kN+nXu0
「任せたよ」
「死ぬなよ」
「死ぬか」
ぎゅっとモニタを睨んで、西岡が行こうとしながら言った。
「あんたは、目の前のひとりだけでええんよ、今江さん」
「……」
「俺が、それ以外は全部、俺が何とかするから。したるから」
「西岡っ」

全部何とかすると、その薄い背にかかるテンションに気付いたら、手を伸ばすしかなかった。
「…やっぱ一緒に来い!!」
ちろり犬のように彼は目だけで振り向く。
「西岡!一緒にっ…」
全部何とか、お前ならきっと出来る。でも待てよ。
それはきっと、めちゃくちゃつらいことなんとちゃうんか。

「…あかん。俺には俺のやることがあるから」
脱兎のように西岡は、呟いてすぐ身を飛ばせて行った。
「…今江、ごめんな。迷惑かけて」
「あ…そんなん、違いますよ!」
「でも、帽子被っててよかった。被ってなかったらアタマ、アフロみたいになってただろうな」
ふらつきかけ茶化して笑う福浦に肩を貸しながら、今江もぐるり背を向けた。仕方なかった。
今江さんそれは違う、これは俺のエゴなんよと、西岡が走りながら呟いたのは知らないままだった。
あんたにはそういう人でいて欲しいし、俺はこういう奴でいたいだけ。
そんで最後に俺がボロボロになったら、あんたは俺もきっと助けてくれるやろと、信じるみたいに西岡は呟いていた。

235 :メビウスの帯(1/5) ◇vWptZvc5L.:2005/04/30(土) 04:55:42 ID:5Hqm3OS90 ?
目の前には橋本将に毛布をかける小林宏之がいる。
その肩にかけられたマシンガンに小野晋吾の目は釘付けになった。
昨日深夜に見た、全身傷だらけのサブローが脳裏をよぎる。
宏之はこれでサブローを撃ったんだろうか。あの看板を撃ち砕いたように。
それは今、目の前にいる宏之からは考えられないことだった。
でも、さっきマシンガンを乱射していたいた宏之ならばもしかして…
晋吾の頭の中で様々な思考の糸がぐちゃぐちゃに絡まる。
一体何から聞けばいい?何を信じたらいい?

宏之は二人の顔に浮かぶ困惑を見抜いた。
「驚かせたかもしれませんね…俺も、放送で自分の名前を聞いたときは驚きました。
 自分が死んでるって言われたんですから。昨日、発信機を飲まされたって聞きましたよね。
 俺、昨夜吐いたときに、その発信機ごと吐いたらしくて。
 たぶんそのときに誤作動かなんか起こして…」
「それで禁止エリアから…」
すぐに理解を示した橋本とは裏腹に、晋吾からは困惑が消えない。
晋吾は宏之が持つマシンガンからまだ目をそらせずにいた。
「…晋吾さん?」
呼びかけられて、晋吾ははっと顔をあげる。
目に映るのは普段と変わらない宏之。

そんなはずはない。こんなに協力的な宏之が、人に銃を向けるだなんて。
サブローにあんな重傷を負わせるだなんて。
でもそれなら、さっきの看板を破壊した行為…あれは一体?
「宏之、おまえ…」
その先は口にするのがためらわれた。これは聞いていいことなんだろうか。
これに触れたがために、宏之の化けの皮がはがれるなんてことはないだろうか。でも…
「サブローを…撃ったのか…?」
――聞かずにはいられなかった。

236 :メビウスの帯(2/5) ◇vWptZvc5L.:2005/04/30(土) 04:57:43 ID:5Hqm3OS90 ?
サブローの名を出したとたん、宏之の顔色が変わった。
「…なんでそれを」
「サブローがそう言った」
「会ったんですか!?」
「ああ。サブローが傷だらけで歩き回ってたから、どうしたのか聞いたんだ。
 そしたらおまえに撃たれたって…。サブローは何か様子がおかしかった。
 で、そこに今朝の放送だろ。 だから俺はきっとおまえとサブローの間に何かあって、
 それでお前はサブローにやられたんだとばかり…」

やっぱりサブローは生きている、現にこうして会ったという人がいる。
それを確信すると、宏之の体は震えだした。脳裏にあの光景がよみがえる。
銃弾が連射される音、飛び散る赤い液体、倒れゆく肉体、そして自分がした行為…
今なお頭にこびりついていて離れようとしない。
重い沈黙の後、宏之は恐る恐る口を開く。
「逆です。俺がサブローさんを…殺したんです」
「は…?」
意表を突く答えに晋吾は戸惑う。
「俺、サブローさんに声かけたんです。そしたらサブローさん、返り血で染まってて…
 もう人殺したって言ってて…俺も殺されそうになって…それで……」
説明しようとするうちに、ずっと押し殺してきた恐怖が次々に思い出される。
一言一言を発するのがもう苦しくてたまらなかった。
「サブローさんを…撃ちました…」
「でも殺したって」
「殺したはずだったんです!!」
問いを遮るように宏之は叫ぶ。ただならぬものを感じて晋吾は黙る。
「俺、サブローさんを撃った後、もう耐えられなくて…一度は死のうとしました。
 でも結局死に切れなくて、目覚めたときには、サブローさんはどこにも……」


237 :メビウスの帯(3/5) ◇vWptZvc5L. :2005/04/30(土) 04:58:26 ID:5Hqm3OS90 ?
その話に晋吾が何か思いついて、地図を広げながら問う。
「なぁ宏之、それいつの話だ?」
「昨日の夕方です」
「どこで会った?」
「えっと…たぶんこの辺です」
宏之は広げた地図の北西部を指す。
「俺が会ったのは、ここだ」
晋吾は地図の南東部、書き込んである部分を指す。
「正確な時間はわからないけど、昨日の夜中だ。
 確かに、そこからここまで移動できない距離じゃない。
 でもあの重症で、こんな距離を歩くのは無理がある。
 やっぱりサブローは変だよ。…おまえ、どう思う?」
「山崎さんが言うには…“やる気”になってる人を温存するために
 運営側がサブローさんを助けたんじゃないか、って」
「あぁ、あの連中なら重態のサブローを回復させる術も持ってるかもな。
 で、山崎さんにも会ったんだ?」

何気ない一言が宏之の胸に突き刺さった。
「さっきまで一緒にいたんです…けど……」
そこから先は声にならなかった。熱いかたまりがこみ上げてきて、喉に引っかかる。
目に光るものを見られたくなくて、宏之はうつむいた。
その様子に、新語と橋本は何があったのかを察する。
宏之の辿ってきた道が、いかに酷なものだったか思いやられた。
「…おまえも辛かったよな」
それまでじっと二人の話を聞いていた橋本が、宏之の肩をなだめるように叩く。
薬が効いてきたのだろうか、毛布にくるまった橋本の視線は、
心なしかさっきよりしっかりしているような気がした。

238 :メビウスの帯(4/5) ◇vWptZvc5L. :2005/04/30(土) 05:00:26 ID:5Hqm3OS90 ?
沈む宏之の気を紛らわせようと、晋吾は別の話を切り出す。
「お前の話を聞く限りじゃ、やっぱりサブローは危険なんだな?
 でもさ、サブローは俺を殺そうとはしなかった。なんでだろ?」
「さぁ、そこまでは…」
宏之が首を振る。
「運営側がサブローを助けたのだとしたら…」
橋本が口を開く。
「サブローは運営側にとって、都合の悪い人間だけを選んで殺してるのかも」
「どういうことだ?」
「だから運営側はゲームを進めるために、やる気の人間を助ける。やる気の人間はその見返りに
 運営側の都合のいいように働く、みたいな契約があるんじゃないですか?」
「…スパイか。そうすると最後に残るのはやる気の人間ばかりじゃないか。
 そんなことが実際に行われてるとしたら、もう手に負えないぞ」
「悲しいけど、ゲームに乗り気の奴は確実にいます。…俺もひとり知ってる」
そう言って橋本は目を伏せた。悔しさをかみ締めるように握った拳が震えている。
その様子に晋吾は思いをめぐらす。

そういえばあのとき、橋本がひどくうなされていたのは熱のせいだけだったんだろうか。
あのチェーンソーを預かりものだと言ったのは、どういう意味なんだろう。
こいつは一体、どんな現実を見てきたんだろう。
辛いことは誰もみんな自分から話そうとしない。
他人に話して見たところで、結局は余計なことを思い出して辛さが増すだけだから。
きっと宏之も橋本も自分の知らない重い荷物を抱えている。
だからこそ各々が背負うものを思うと、胸が締め付けられるようだった。

239 :メビウスの帯(5/5) ◇vWptZvc5L. :2005/04/30(土) 05:01:24 ID:5Hqm3OS90 ?
「…いや、それも変ですよ。運営側に都合がいい人だとか悪い人とかあるなら、
 最初から殺し合いなんかさせる意味ないじゃないですか。誰が残るかわからないのに」
宏之が横から異論を唱える。もっともだと思った。
「だよなぁ。あー、もう訳わかんねぇ」
結局、議論はふり出しに戻って進展しない。どこを取っても無理がある。
話の筋はねじれて繋がり、訳もわからぬまま延々と続く。
裏を見抜いたと思ったらいつの間にか表に戻っていたりする。

「とにかく話を整理すると、
 ・サブローは危険
 ・サブローを助けた誰かがいる、それは運営側である可能性が高い
 ・サブローは何か目的を持って動いている
 ってとこか。何かわかんない事ばっかだな…」
晋吾は大きなため息をついた。


240 :代打名無し@実況は実況板で:2005/04/30(土) 05:03:59 ID:5Hqm3OS90 ?
>235-239
◆vWptZvc5L.さんの書き込み代行です。
不備等あったらスミマセン。

241 : ◆vWptZvc5L. :2005/04/30(土) 08:58:11 ID:+y3p1IdB0
書き込めるかな?代行ありがとうございました。
夜中に投下しようとしたら、全然書き込めなかったもので…

242 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/01(日) 00:31:08 ID:0yO7uTeJ0
GJGJGJ保守

243 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/01(日) 00:38:15 ID:43oEKtBt0
ソフロワ新スレ立ちました
http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1114872438/l50

244 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/01(日) 10:04:17 ID:DZDvmyph0
捕手

245 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/01(日) 23:25:19 ID:0yO7uTeJ0


246 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 01:30:35 ID:zMMoruaX0


247 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 02:08:05 ID:iz0Ph1bM0
t

248 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 02:20:47 ID:iMbTr6zU0
a

249 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 10:05:04 ID:fRa1g2Ho0
s

250 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 12:36:29 ID:j95Q6DSH0
h

251 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 12:52:41 ID:Eo2/2IW1O


252 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/02(月) 16:17:01 ID:AYxi2oNn0
n

253 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/03(火) 01:08:19 ID:/1v1A6MU0


254 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/03(火) 10:13:11 ID:2L5H1Vvc0
o

255 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/03(火) 15:27:12 ID:/1v1A6MU0
・・・・・・・・・・・orz

256 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/03(火) 15:42:23 ID:QAuohjnK0
orz

257 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/04(水) 00:50:16 ID:gyMP0hLk0
J

258 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/04(水) 13:40:13 ID:FErgYyx9O


259 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/05(木) 00:31:21 ID:nEwzn+Xl0
z

260 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/05(木) 00:33:24 ID:5gRcZ9Zw0


261 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/05(木) 00:38:35 ID:Wp3N85Om0
m

262 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/05(木) 07:58:13 ID:vJgRvTPE0
e

263 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/05(木) 10:13:34 ID:jGkDhK9aO
スンヨプ何してるんだろう・・・

264 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/05(木) 10:52:58 ID:AYTGQu7DO
ベニたん(ry

265 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/06(金) 00:43:47 ID:9bzXiWuu0
まぁ保守

266 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/07(土) 02:01:07 ID:PuhQqj3D0
おやすみまえにほしゅ

267 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/07(土) 17:41:22 ID:ABKCiLdz0
Ha・・・shy

268 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/07(土) 23:00:29 ID:Sy3i5s9O0
 ( ゚∀゚)
  (    ) <捕手! 捕手!
   | 彡つ
   し∪J

269 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/08(日) 01:38:43 ID:qFBTyz680
保守!

270 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/08(日) 16:28:54 ID:BDotButyO
強い。

271 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/08(日) 17:09:16 ID:ey63Y7AxO
うん。

272 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/09(月) 21:29:24 ID:Vd8ZcEA50


273 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/09(月) 22:38:09 ID:bywfVFim0


274 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/09(月) 22:58:24 ID:dHvgnp5l0


275 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/09(月) 23:28:35 ID:p1m/z+Ag0


276 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/09(月) 23:34:08 ID:IocVvA0L0


277 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/09(月) 23:42:33 ID:n/CLhRg20


278 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/10(火) 00:26:57 ID:sL3smVVi0
GJ

279 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/10(火) 22:13:21 ID:+tZQ2gCg0



280 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/11(水) 00:43:48 ID:W21juYZt0
保守っと

281 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/11(水) 18:22:53 ID:DoBhu0nu0


282 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/12(木) 23:04:45 ID:JtHyvL8i0
保守しますよ

283 :可能性は5合(1/2) ◆vWptZvc5L. :2005/05/13(金) 16:35:59 ID:poUogNsY0
「この辺でいいかな」
人目につかなさそうな草むらを見つけると、戸部浩はどかっと座り込む。
さっき盗み見た光景が戸部に大きな影響を与えていた。
それはもう死んだはずの男を見かけて、混乱していたときに聞いた言葉。

――『昨夜吐いたときに、その発信機ごと吐いたらしくて
   たぶんそのときに誤作動かなんか起こして…』

その言葉に、戸部はある画期的な作戦を思いついたのだった。
そもそも、何でこんなことに巻き込まれているのかといえば、全部発信機が悪いのだ。
発信機なんか飲まされたから、自分の行動や生死が把握されてしまうし、
禁止エリアの恐怖に怯えなければならない。そんなものは吐き出してしまえばいい。
吐いてその機能を止めれば、それで俺は死んだことになる。

何でこんな簡単なことが思いつかなかったんだろう。
まず俺一人が体を張って、それが正しいことを証明する。
それで成功すれば、他の連中にも教えてやって発信機を吐かせる。
それで俺は誰も殺さずにそいつを「殺した」ことになる。
それでも話しの通じない攻撃的なヤツに出会ってしまったら、禁止エリアに逃げ込めばいい。
発信機さえなければ禁止エリアなんか関係ないし、誰も追ってはこられない。

284 :可能性は5合(2/2) ◆vWptZvc5L. :2005/05/13(金) 16:40:19 ID:poUogNsY0
「うん、これで完璧じゃないか」
戸部はそうつぶやくと、満足げにうんうんと頷く。
そうと決まれば、吐くために一番有効な手段は何か?
「…そりゃ、やっぱ酒しかねーだろ!」
目の前にある褐色の瓶には泡盛が約5合分入っている。これだけあれば吐くには充分だ。
ユウゴーから押し付けられた泡盛が、まさかこんなことに役立つとは思わなかった。
自分は酒は強くないが、今はそれが幸いする。
がっと一気に飲めば、きっとすぐに気持ち悪くなってわっと吐けるはずだ。
「…よし」
意を決して、戸部は瓶をつかんだ。
コップなんて気の効いたものは当然あるはずもなく、ラッパ飲みするしかない。
そのまま泡盛を一気に流し込もうとしたが、すぐにむせた。
「がはっ、げへっ…げぇー、何じゃこりゃ…強すぎる…」
まずい、このままじゃ探知機を吐くとかいう以前にアル中で倒れてしまう。
やっぱり一気飲みはヤバイ。そう悟ると、今度は少しずつ泡盛を喉の奥に流し込んだ。
このペースならイケる。戸部は瓶を置くと、ニヤリと笑った。

「おっしゃ、吐くまで飲むぞーーーっ!!」

285 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/13(金) 21:53:35 ID:ffHasKyu0
戸塚ガンガレw

286 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/13(金) 22:01:15 ID:rNujbc6a0
戸塚の発想ワロスww

287 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/14(土) 00:11:39 ID:2L6wwROm0
おはよう

288 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/14(土) 07:41:37 ID:+QUQH4/I0
戸田がんがれ!超がんがれ!!

289 :虚空  1 ◆prGJdss8WM :2005/05/15(日) 00:29:56 ID:m5jTxILv0
虚空を何度打ち抜いたか、神経がギリギリになっていると数えることも出来ない。
勝手にお守りのように思っていたマシンガンだが、よく考えるとそんなことあるわけもなかった。
それでも告白するように撃つ。懺悔するように撃つ。この音が自分を殺すことになっても、それは懺悔だ。
どこか本能でうっすら、大塚はそう思う。

また半分目を閉じたままで、雅英はじっと蹲っている。
あまりにも動かないので、誰かが見ていたら死んでいると思ったかもしれない。
しくじったかと、吐く息の中で思った。湿った木小屋の、また湿った空気は淀んだままだった。
そしてまた事態が動きつつあるのを雅英は見ていた。
点がいくつか入り混じり、その中で一つこぼれおちるのを、雅英は待っていた。

あの阿呆は何をしとるンやと、西岡は丘の茂みを滑り落ちる。
がんがんがうぅん、火器が激しく空を撃つ。阿呆やないのかと舌打ちしたい気持ちだ。
小林雅英がもし自分の思ったとおりなら、いくら威嚇しても無駄というものだ。
むしろ引き付けていることになる。阿呆だ。
そして多分その場合、自分の居場所もばれている。ただ西岡は全部の可能性を掛け合わせた上で、その考えに賭けるつもりだった。

どうしても接近してこないのもきっとそのせいだ。普通なら不意打ちした後、また生存の音が聞こえれば止めを刺しにくるはずだ。
それでも姿を現さず、じっと虎視眈々と何かを狙っているように、西岡には思える。
あくまで全ては自分の頭の中で組み立てられた、机上の空論に過ぎないかもしれない。
いや、できればそうであってくれと、半ば本気で思った、それは少し西岡の油断になった。

290 :虚空  2 ◆prGJdss8WM :2005/05/15(日) 00:32:48 ID:m5jTxILv0
「うぉっ!?」
絶対に気付かれてはいないだろうと、そうも思っていたかもしれない。故に足音も気配も消すのが少しぞんざいになっていた。
自分の持っているモニタには、周囲の殺意の存在が見てとれる。そしてスピードを最優先していたせいか。
足元の、次に踏み込もうと思っていた泥が派手に飛び散って吹っ飛ぶ。
たたたたたっと、あのマシンガンの音がはっきりこちらに向かい聞こえた。
「…っち、がーう!!」
ずるっと体勢を崩しかけながら、西岡は反射的に手をかけていた岩場の裏に転がり込む。あまりにも鮮やかな体捌きだ。
不意に脇腹がまたずきずきっと何度か疼いて、そんな思い出したように痛んでくれるなよ、こんな大事なときにと大塚は歯を食いしばった。
何かが見えた。何かが丘の上から転がり落ちてくるのが、まろび落ちてくるのが。
見えたと言うのは正確ではない。晴れた煙と復活した耳に、木々を誰かが渡ってくる気配が届いたのだ。

全身系を張り詰めていなければ先制は出来なかっただろう。素早い。それに今の反応はどうだ。
ちっと、大塚は心の中で舌打ちする。
こうなったらもう撃てない。
相手の武器もパーソナリティーもよくわからないままこちらが乱射を続ければ、ただ位置を知らせることになる。不利になるだけだ。
くっそ、また大ピンチか俺。和也は大丈夫なのか。相手はひとりなのかどうなのか。
だから痛むなよ、頼むから。全部終わったらいくらでも、お前のために死んでやるから。
「ちょっ、大塚サンっ!?」

身をかがませてふうっと息と痛みを吐き出して、大塚はそのまま動かない。
じくじく地面から水気が身体にしみこんでいく。
「大塚サンって!撃つなオッサン!!」
おっさんたあ随分な言い方じゃねーか。ってことは誰か、年下の奴か。
「西岡です!話聞け!!」
「…とりあえず先輩には敬語を使えよ、ルーキー!?」
「っ、二年目やっ!」

291 :虚空  3 ◆prGJdss8WM :2005/05/15(日) 00:38:25 ID:m5jTxILv0
聡いなと、叫びながらそれでも西岡は思う。むしろ天性のカンとか、鋭敏さというものか。
一度で仕留められないとわかればすっと引く、そうされればこんなモニタでもなければ深追いは出来まい。
「大塚サン、どうでもいいからそんなん…いいすか、あんた今、誰に狙われてると思ってるン?」
「…お前」
「違う!俺やないって、俺は助けにっ…」

西岡と言った。知っている、天才だ。
何をやらせても上手い。何をやらせても一番早くこなす。こんなときにもそれは一緒かと思った。厄介だ。
生意気で、アレだ、くやしいけど天才だ。畜生、厄介だな。
「今、ドカンとやられて信じられるかっ!!」
「声、でかいっ」
ああもう、いらいらする。こんな言い合いをしている余裕は無い。
「…」
「頼んます、聞いて下さい。やばいことなんです、マジで」
「……。」
こふっと息を吸い込み、ごつごつした岩に背を押し付ける。ごくりと唾を飲み込んだ。
大塚はじっとうずくまっていた。瞬きすら忘れて、痛みごと野生動物のようだった。

「あのねえっ…」

どう説得しようかと右手のモニタをちろっと見た。これだ。これを知らせたい。
「…っ!」
ああ、事態はどんどん最悪の方向に向いていく。
秒を追うごとに、せっかく着替えたシャツにも泥と水が染みてくるし、小林雅英も近づいてきている。

確実すぎる。マシンガンの音が途切れてからどれくらい経っている?正確すぎる。

どれに賭ける?どれを信じる?誰を、どれを、何を。

ぐるぐる、ばばばばっといくつものシーンを思い描いて、最後に信じたのはやっぱり自分しかなかった。

292 :虚空  4 ◆prGJdss8WM :2005/05/15(日) 00:40:56 ID:m5jTxILv0
「…撃つなよ」
西岡はすっと立ち上がった。斜面の上から、大塚のいるあたりに上半身を無防備に晒す。

いくつかの木々と茂みすらも一瞬にして緊張したように見えた。西岡は半眼のまままた、撃つなよと静かに言う。
ベルトにピストルとモニタを締め込んでいるので、高く上げた両手は全くのカラだ。しゃあ、かあ、何か鳥が飛び去りながら音だけを残していく。
大塚がどこかで息を呑んでいるだろうと、一秒ほど経って思う。撃ってこないからだ。
本気で殺すつもりならこの隙を逃すわけがない、自分ならそうだ。やれやれ、大塚サンも俺と同じタイプみたいやな。

撃つな、撃つなよ、そう呟きながら西岡は一歩ずつ後ずさるように、斜めに岩場を通り過ぎる。
計算していた位置に行くのが先か、彼がたどり着くのが先か、もしかしたら大塚のマシンガンが火を噴くのが先か。

これ、めちゃくちゃ賭けなんやけどな、くそ、やばいかもなあ。
「ちゅーかもう、俺、ああもうっ…」
呟く言葉がいつの間にか自分へのものになってきていた。

大塚のほうに背を向けて、耳がキンキンするような状態で、頬がひきつりながらじっと立った。
彼がたどり着くのが先か、大塚が背を撃つのが先か、じりじりする時間は西岡でも計算できなかった。
自分の立てた仮定を自分が信じないでどうすると思ってはいたが、それでも厳しい時間だった。
机上の空論を掴んでいるとしたら。一瞬ずつ寒気と熱気が体を襲う。
もし虚空を掴んでいるのだとしたら。
心臓の音だけはずっと聞こえていた。

293 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/15(日) 01:03:52 ID:8qqiiDC50
戸川的捕手

294 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/15(日) 01:12:23 ID:8qqiiDC50
あ、運悪っ。俺。
ともかく、書き込み乙です。

295 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/15(日) 11:50:38 ID:tFeLL4vE0
西岡カコイイ

296 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/15(日) 13:06:42 ID:zP6Rl7FG0
職人さん乙です!!
しかし雅英…コワイ…!

297 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/15(日) 20:18:58 ID:EZ4aNYl5O
スライディング保守

298 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/15(日) 23:32:51 ID:pLB5QiFr0
明日でn日ルール適用?

299 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/16(月) 00:03:53 ID:cpKfA5NJ0
だったら立て直したほうが

300 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/16(月) 01:11:03 ID:H1epkjrP0
大塚もがんがれ超がんがれ

301 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/16(月) 12:45:29 ID:J4xNilRq0
定時放送はまだ?


302 :代打名無し@実況は実況板で:2005/05/16(月) 16:57:23 ID:QbLjAmXHO
定時放送待ち保守

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